アパレル、続々と「セール縮小」に動く納得の裏事情 以前から指摘されていた商慣習の問題に変化

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最も大きかったのは、ブランドごとの事業部制を廃し、販売部と商品部の部門を分離させる機能本部制に移行したこと。事業部ごとの組織では、わかりやすい成果として、数字を追うことが優先されがちだ。売り上げを上げるために売れ筋を追っていく。

だが、それが過剰化・加速化することで、ブランドごとの差が薄まり同質化していた。そこにメスを入れようと、事業部に横串を通して「販売」と「商品」に組み直した。ビームスが持っている各ブランドの独自性を明確にするとともに、受け身ではない自らの提案を行っていこうという意図からだ。

「販売」の意見を「商品」にフィードバック

アパレル業界では、モノ作りをする「商品」と、お客に伝えて買ってもらう「販売」との連携がスムーズに行っているケースは決して多くない。

「トレンド=流行を取り入れた」「新しいコンセプトを盛り込んだ」という「商品」側の訴求ポイントと、「お客はこういうものを望んでいる」「これが売れている」という「販売」側の意見が必ずしも一致しないのだ。「これを作ったから売ってほしい」という「商品」側の意見と「それじゃ売れない」という「販売」側の意見が対立する。

ビームスは、顧客のニーズを「販売」側が「商品」側にフィードバックし、そこから未来を見据えた商品を提案するというコミュニケーションをできるだけきめ細かく丁寧に行うよう、関わりを強化しているという。

それとともに、従来、どちらかというと、全国にわたるショップに向け、均質な品揃えを組んでいたのを見直し、現場の声を聞きながら、地元にフィットした品揃えを組むようにした。

セールについても全面的に見直した。シーズンものを売り切るため、一斉に50%、60%と大幅に値下げするのではなく、店頭で動きが鈍いものは、早くから値下げして売り切る。動いているものはプロパーで売り続ける。あるいは、セール期間中に、あえて話題の商品を正価で展開するなど工夫を凝らした。

期間についても、だらだらと長期化させずに必要最低限に抑えるなどの施策を打ったところ、着実に利益が上がってきた。長きにわたって続いてきた「何となくの慣習」を見直し、「お客様の目線に立って、セールのあり方を考えた」結果だという。本質を見据えた抜本的な改革が、実を結びはじめている。

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