セミナーレポート

グローバル経営戦略 失敗の本質に迫る ― 財務・経営管理における戦略的アプローチ ―

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基調講演Ⅱ
「キャッシュマネジメントの戦略的活用」

栗原 宏 氏
KPMG/あずさ監査法人 金融事業部 金融アドバイザリー部 マネージング・ディレクター

あずさ監査法人の栗原宏氏は「企業の口座の入出金を効率的にするキャッシュマネジメントシステム(CMS)は、CFOにとって戦略目標達成の有効な手段になる」と語り、その戦略的活用法を探った。CMSは、現金と借入の両建てになった資金を効率化して総資産を圧縮し、そこから捻出した資金を成長投資に回すことで戦略的意義を持つ。また、資金繰り予測を行い資金の見える化を実施し、1日単位で調達すれば、ムダなコストを減らせる。栗原氏は「CMS導入にはROI(投資対効果)が必要という声を聞くが、費用削減、財務体質改善、リスク削減効果を定量化すれば、十分にペイする」と述べて、ERP(統合型業務ソフトウエア)やシェアードサービスと組み合わせた財務プラットフォーム構築を勧めた。

また、お金の出入りに属性の〝色〟をつけるとともに、集中受取り、インハウスバンク、集中支払いのテクノロジーを駆使し、キャッシュフローをリアルタイムに把握する方法も提示。部門別やセグメント別バランスシート作成を容易にし、ROE(自己資本利益率)へ貢献する可能性も示した。栗原氏は、「CMSは将来の活用可能性が高いので、将来を見据えた導入をすべき」と、発展性を考慮した導入を促した。

事例講演
「資金管理のベストプラクティス」

井上 隆敬 氏
リクルートホールディングス ファイナンス統括室 財務部財務グループ

リクルートホールディングスは、国内で2012年にスウィーピングで各口座残高を日々ゼロにするゼロ・バランス・アカウント(ZBA)を導入。13~14年には欧米豪で、資金を実際に移動せずに資金集中化のメリットを享受する多通貨ノーショナルプーリング(MCNP)、14~15年にはアジアで、事業会社向けのSWIFTコード(BIC)を使い、キリバのシステム導入による資金の見える化……と、流動性インフラ整備を進めてきた。プロジェクトマネジャーとして指揮した同社の井上隆敬氏は「現場に通って自ら仮説を立て、意見交換をきちんとやりきること。そして、ぶれない軸や、それを形にした財務ポリシーを持つことが成功のポイント」と述べた。

先進的なインフラ構築成功の一方で、同社は、プロジェクトの失敗・途中断念も経験してきた。「実務について理解不足のまま、コンサルに丸投げして現場の抵抗に遭ったり、国内の仕組みのコピーを海外に押しつけようとしたことが、頓挫の原因にあった」と井上氏。「タイミングを間違ったり、現場の手触り感を欠いたままのプロジェクトは失敗につながる」と続けた。

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