東武小泉線、「日本のブラジル」へ走るシブい路線 異国情緒のカラフル駅舎…メインは通学利用

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「成島駅も駅前広場の花壇、これを地元の人が集まってきれいに整備してくれていて。わざわざ遠くから来るような観光地のない路線ですが、地元の人たちに支えられている。そういうところも、ローカル線らしさかもしれませんね」(丸山さん)

成島駅前の花壇
沿線の人々によって整備されている成島駅前の花壇(撮影:鼠入昌史)

ちなみに、終点の西小泉駅のホームで折り返し列車の出発を待っていると、発車直前にLINDBERGの名曲『今すぐKiss Me』が流れてくる。

駅のすぐ南の県道に歩道橋があるから、そこの上から見かけた革ジャンに駆け寄って……などというのがこの歌のルーツなのか……と思ったら、まったく関係ないらしい。

なぜか流れる『今すぐKiss Me』

「なんでこの曲なのかは、ちょっとよくわからないですね。ただ、何かの縁があって使っているわけではないことは確かです。信号に連動しているので、出発信号機が青になったら鳴り始め、列車が出発しても信号が赤に変わるまで流れています。ワンマン線区ならではの発車メロディ、ですね」(清水さん)

この発車メロディ、運転士に信号開通を知らせる合図だという噂が一部で流れているらしいが、東武鉄道さんによれば乗客に出発間際であることを伝えるのが目的だとか。なぜLINDBERGなのかはともかく、案外こうしたローカルな駅でポップス発車メロディを聞くと、うれしくなるものだ。

“日本のブラジル”大泉町の玄関口・西小泉。駅前にしばらく立っているだけでもなんとなく異国情緒を感じてしまうのは、そういう町であることを知っている先入観がなせる技かもしれない。

大泉町にブラジルやペルーの人々が多くなったのは1990年以降。入管法が改正されて日系人を中心にやってきたのがはじまりだとか。丸山さんや清水さんは「もうそれから30年以上経ちますし、大泉に住んで2世代目、という方もいる」と話す。学生たちの利用がメインでほとんどは典型的な北関東のローカル駅。それが終点に来ると急に“日本のブラジル”へ。小泉線、なかなかシブい、ローカル線なのである。

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鼠入 昌史 ライター

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そいり まさし / Masashi Soiri

週刊誌・月刊誌などを中心に野球、歴史、鉄道などのジャンルで活躍中。共著に『特急・急行 トレインマーク図鑑』(双葉社)。

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