日本製鉄とJFE、図表でわかる「稼ぐ力」の違い 2020年3月期の大赤字転落から急回復を遂げた

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JFEホールディングスの売上高は2022年3月期で4.3兆円、日本製鉄は6.8兆円だから、約1.6倍の開きがある。

利益面の差はさらに大きい。本業のもうけを示す事業利益(IFRSの営業利益には特別損益が含まれるので、それらの計上前の利益)でみると、2022年3月期はJFEホールディングスが4146億円なのに対し、日本製鉄は9381億円と2倍以上の開きがある。

日本製鉄とJFEの事業利益の比較

2023年3月期第3四半期は、一段と差がついた。日本製鉄が事業利益7618億円(前年同期比2.4%増)で3四半期累計で過去最高を達成したが、JFEホールディングスは2310億円(同28.4%減)と大幅減益となった。

今期は主原料の価格が上昇する中、半導体不足による自動車減産や中国の経済悪化などで世界的に鉄鋼需要が低迷する厳しい事業環境にある。そうした中でも、通期見通しで日本製鉄は事業利益を8700億円(前期比7.3%減)と高水準を保つ。一方、JFEHDの事業利益は2350億円(同43.6%減)を見込んでおり、利益面では実に4倍近い差がつく見通しだ。

海外の収益力と構造改革の進捗の違い

なぜここまでの差がつくのか。

JFEホールディングスの寺畑雅史副社長は「他社について正確な分析はできないが」と断ったうえで、海外を含めたグループの収益力に差があること、構造改革の進捗に差があることで鉄鋼事業の収益力に差があることなどを挙げている(寺畑副社長のインタビューはこちら)。

日本製鉄とJFEの鋼材平均価格

両社ともに「量から質への転換」を積極的に進めており、値上げによる鉄鋼の採算改善を図っている。ただ、1トン当たりの鋼材平均価格を見ると日本製鉄のほうが上。値上げの進捗や高付加価値品比率の向上でも日本製鉄が先行しているといえる。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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