女性プチ起業「サロネーゼ」の意外な落とし穴 生徒が自分のライバルになってしまう!

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伊勢丹新宿本店本館2階アーバンクローゼット担当の佐藤文建氏は、「アーバンクローゼットのコンセプトは『女性として、妻として、母として活躍する洗練された女性のためのライフスタイルを提案する』こと。伊勢丹として商品に関しては磨きをかけてきたが、課題はイベント。もっと魅力的なものにしていきたい」と、ジェネリーノとのコラボに期待している。

おもてなし競争の激化にライバルの増加

松前博恵(まつまえ・ひろえ)●ゲームメーカー、出版社を経て独立。PR、広告、マーケティング事業を手掛け、専門職を持つ主婦ブロガーのコミュニティサイト「ジェネリーノ」を主宰。優秀な女性たちを活用したいと考える企業や自治体とのコラボを積極的に推進している(撮影:ヒダキトモコ)

ジェネリーノのメンバーのように、得意なこと、好きなことを究めて仕事につなげることを希望している主婦は多いが、厳しい側面があることを忘れてはならない。松前氏は、サロネーゼの世界では、生徒に満足してもらうための“おもてなし競争”が過熱していることを指摘する。

「サロネーゼ回りが好きな人も多く、こうした目の肥えた生徒さんたちを満足させるための費用がばかにならない。食べていけるレベルの先生となると、100人中5人くらいではないか」

教室に通っている生徒が、実は別カテゴリーで先生をしているケースも多く、先生が立場を変えて生徒の教室に通うこともあるという。「親戚付き合いのようというか、仲間うちでおカネを出し合っているというか――。同じような嗜好を持った仲間が集まって循環している感じ」だという。

主婦相手の教室ではなく、ビジネスとして発展させたいと考えている人の中には、企業や専門家とのコラボレーションを推進したり、ブログを頻繁にアップするなど、執筆に注力するケースもみられる。しかし、自分の世界観を守りたいサロネーゼにしてみると、広い顧客層を対象にするのは難しい面がある。「サロネーゼに支持される先生と、企業から支持される先生は違う」とされるゆえんだ。

松前氏は今年、ジェネリーノのメンバーに対してメンター的な役割を強化していくつもりだ。なぜなら、「多くのメンバーと面接をして、葛藤があることが浮かび上がってきた。それは、生徒や弟子が増えていくと彼女たちが自分のライバルになること。自分のそばで、同じような内容で始められてしまう」ことに悩んでいる人が多いからだ。

フリーランスで働く主婦が、メンタル的なサポートを受ける場はほとんどない。そのため、同じ境遇にある者同士がなぐさめあうことが多くなる。松前氏は「度が過ぎると危険で、その輪から抜け出せなくなる。そこで、ビジネスプランを考える機会などを提供し、実務経験豊富なシニアの人たちを起用してメンターとしてお願いすることも検討している」と話す。

自宅で開業できるという気軽さの裏には、生存競争の厳しさがある。活躍を続けるサロネーゼになるには、「自分が培ったセンスを磨き、もっと勉強して先をゆく」(松前氏)覚悟が求められている。

高橋 志津子 東洋経済 記者

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たかはし しづこ / Shizuko Takahashi

上智大学法学部国際関係法学科卒。東洋経済新報社に入社後は、会社四季報、週刊東洋経済、ムック、東洋経済オンラインなどさまざまな媒体で編集・執筆を手掛ける

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