ジブラルタル海峡「鉄道トンネル」は実現するか 欧州とアフリカを直結、計画は40年以上前から

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一方で、スペインとモロッコの関係改善によって貿易量の増大が見込まれる中、海底トンネル計画が実現すれば両国にとって史上最大のプロジェクトとなる可能性が高い。モロッコはこれまでも欧州諸国にとって、アフリカ大陸へのゲートウェイとして機能してきた。トンネルが現実のものとなれば、欧州とアフリカの関係に大きな変化が訪れる可能性もある。

日本から見るとモロッコはアフリカの北西側にあり、地図上では非常に遠く離れている。同じ北アフリカに位置する国でも、エジプトはピラミッドをはじめとする古代遺跡の観光に訪れる日本人が多いが、モロッコまで足を伸ばす人は少数だろう。

しかし、実際に訪れてみると、意外なほど欧州の経済圏に組み込まれている。マラケシュを筆頭とする観光都市では、現地通貨に両替しなくてもユーロ紙幣でそのままやり取りできる場所も多い。欧州資本の大規模スーパーではEU圏内から輸入された大量の商品が並び、逆にモロッコ製のお土産を探すのが難しいくらいだ。

アフリカ初の高速鉄道も

鉄道の分野では、フランスの技術協力で建設されたアフリカ初の高速鉄道「タンジェ=カサブランカ高速鉄道」(現地名アル・ボラク)が2018年11月に開業。ジブラルタル海峡に面したタンジェと首都ラバト、観光都市のカサブランカを結ぶ全長323kmの路線で、モロッコ国鉄(ONCF)が運行。フランスの2階建てTGVと同タイプの高速車両「ユーロデュープレックス」が走っている。

観光地のマラケシュは今のところ高速鉄道のネットワークから外れているが、2023年に入って高速車両のユーロデュープレックスによるマラケシュ駅への乗り入れテストを開始した。フランスのTGV同様、在来線にも乗り入れ可能な強みを活かして、観光客の利便性を高める狙いだ。

モロッコ国鉄 マラケシュ駅
壮大なマラケシュの駅舎(筆者撮影)
マラケシュ駅構内
マラケシュ駅に停車する列車。客車はフランスの鉄道と同タイプだ(筆者撮影)
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