防衛費増額・GXで様変わりした財政の中長期試算 「2025年度黒字化達成」は歳出改革の中身次第

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まず、GX経済移行債については、中長期試算でどう取り扱われたのか。GX経済移行債は、エネルギー対策特別会計において2023年度から10年間で20兆円規模の経費を賄うべく発行されることを想定している。そのうちすでに、2022年度と2023年度に1.6兆円分のGX経済移行債が発行されることが決まっている。その残りを2024年度以降に毎年均等に発行されるものと想定している。

エネルギー対策特別会計も、政府が目標としているPBの対象となる会計である。このままいけば、GX経済移行債が発行される分だけPBは悪化する。それだけ、2025年度の目標達成は困難になると思われる。

GXの支出と財源はPB試算の対象外に

しかし、今般の1月の中長期試算では、GX経済移行債を含め、GX対策の経費と財源は、PB試算の対象外とされた。その理由として、GX経済移行債は、カーボンプライシングで得られる将来の財源によって2050年度までに償還を終えることが想定されており、多年度で収支を完結させる枠組みを設定していることを挙げている。だから、いくらGX経済移行債を発行しても、PB目標の達成には関係ない、というわけだ。

確かに、これまでの中長期試算でも、多年度で収支を完結させる枠組みがあることを理由に、東日本大震災の復旧・復興対策の経費と財源は、PB試算の対象外としてきた。つまり、復興債を多く出しても、PB目標の達成には関係ないものとしてきた。GX対策も、それに倣った形だ。

次に、防衛費について見てみよう。防衛費は、2022年12月に閣議決定された「防衛力整備計画」に沿って、2023年度から2027年度まで増額されることを、今般の中長期試算では織り込んでいる。だから、その分だけ歳出が増えることが試算に反映されている。これだけだと、その分だけPBは悪化することになる。

しかし、「防衛力整備計画」や2022年12月に閣議決定された「令和5年度税制改正大綱」で示された、国債増発に頼らない財源が、予定どおり確保できるものとして中長期試算には反映されている。つまり、防衛費が増えるのに連動して国債以外の財源が確保されるという前提で試算されているのである。

そのため、防衛費の大幅増は、大きく財政収支を悪化させる要因にはならない、という結果となっている。

ここまでみると、防衛費の大幅増もGX経済移行債も、PB目標の達成とは切り離した形で、今般の中長期試算が公表されていることがわかる。苦肉の策が、試算にもにじみ出ている。

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