福島事故を受け、原発大国・中国はどう動くか
福島第一原子力発電所の事故は、世界各国のエネルギー戦略にも影響を及ぼしそうだ。中でも、世界最多数の原発計画を進めている中国が、事故をどう政策に反映させるのかが焦点のひとつになる。
中国政府は東日本大震災発生直後の12日に環境保護部の副部長が「中国の原発推進計画に変更はない」との方針を示した。だがその4日後の16日には一転、中国国務院(政府)が、原子力の安全計画が策定されるまでは原子力発電関連プロジェクトの審査・批准(承認)を中止することを明らかにした。在中国日本国大使館の柴田聡・経済部参事官は「原子力セキュリティーに対して、非常に慎重な姿勢を取っていることがうかがえる」と指摘する。
ただ、資源面の制約を解消し環境保護を推進する観点から、今後も中国が原発への依存度を高めていくのは不可避だろう。中国は火力発電への依存度が約9割と高く、燃料の石炭についても09年から純輸入に転じている。石油も輸入に依存する中、今後いかに火力発電への依存度を下げるかが、安定的な経済成長を担保する上でも重要な課題となっているからだ。
現状では中国の全発電量のうち、原子力は2%を占めるに過ぎない。だが、2020年までに非化石燃料の比率を現在の9%から15%に引き上げるという大目標を達成するためには、日本同様、原子力の推進政策をとらざるを得ないのが実情だ。風力のようなクリーンエネルギーも推進されるが、技術的な難しさなどを考慮すると、ごく一部の利用にとどまるだろう。原発の数としては現在13基が稼働しているが、中期的にはさらに35基が追加される見通し。計画ベースでは世界最多で、沿海部を中心に中国各地に原発ができることになる。