新入社員は、生命保険に入ってはいけない 勧誘をされても絶対に断るべき理由とは?

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3.しばらくは保険に入らない:保険の誘いは勇気をもって断ろう!

さてここからが肝心です。

「オレの学生時代の友人Bが保険代理店を経営している。一度会って話を聞いてもらえないか」このように職場の先輩に頼まれました。さあ、あなたはどうすべきでしょうか。

「すみませんが、保険に関心がないのでせっかくお会いしてもご迷惑をおかけするので」などと答えてはいけません。それでは先輩の顔が立ちません。入社早々、先輩との関係も気まずくなってしまうかも知れません。もう学生ではないのですから「分かりました、喜んでお会いします」と答えましょう。そのうえで、Bさんと会った時にどのように対応するかを考えるのが社会人としての行動です。

さて新社会人に保険は必要なのでしょうか。しばらく保険は要らない。それが答えです。仮にあなたが亡くなったとします。もちろんあなたの死を悲しむ人たちは大勢いることでしょう。しかし経済的に困る人はいないはずです。だから死亡保険は不要です。病気になったとしましょう。あなたはすでに国の健康保険制度に入っているのですから、治療費はほとんどかかりません。だから医療保険も不要です。病気やケガで長期間会社を休むことになっても大丈夫です。健康保険から給与の3分の2が最長1年半支払われます。このように、新社会人のあなたに保険は不要なのです。

新社会人のための賢い保険の選び方は何か。世間ではどうアドバイスされているのでしょうか。ネットで調べてみましょう。そこには実にさまざまな保険専門家からの情報が溢れています。生命保険はあまり必要ないが葬儀費用程度は入ったほうがよい。いや、それよりも必要なのは医療保険だ。若くてもケガはするから入院の場合は自己負担額がバカにならない。終身保険は貯金にもなるから若くて健康な内に入ると得だ。読んだあなたは思わず、なるほど、と説得されそうになります。実にうまく書かれています。

売る側からの情報は疑ってかかろう

でも、ここで考えてほしいのです。このような保険情報のほとんどは保険を売る側から発信されています。いくら良いことが書かれていても、いくら良心的に書かれているようでも、バイアスのかかった情報は疑ってみるという視点が社会人になったあなたには求められるのです。

さて、いよいよあなたはBさんと会うことになります。Bさんに勇気と敬意を持って自分の考えをしっかりと伝えましょう。そして上手に保険はお断りしましょう。とてもそんな自信がない、などと言ってはいけません。社会に出ればあなたの仕事はこんなことの連続です。Bさんとの話し合いは、そのよい実践練習だと思って頑張ってください。

職場の先輩たちのなかには入社したての頃、「社会人になったのだから」という訳の分からない説得で生命保険に入ってしまった人たちが大勢います。いったん入ってしまうと保険はなかなかやめにくいものです。そうなると、不要な保険のために保険料を毎月払い続けていくことになります。年間を通すとかなりの金額です。そして恐ろしいことに、いつしかそのことに慣れてしまい常態化してしまいます。試しにあなたの周りの先輩方に聞いてみてください。その実態が良く分かると思います。

皆さんは同じ過ちを犯してはいけません。保険には当面入る必要がありません。一般的には結婚して子供を持つまで、保険のことは完全に忘れていても問題ありません。そして、そのかわりに、たとえ少額でも貯金を始めることです。それこそが「お金」と上手に付合うコツを学ぶ社会人としての第一歩です。

この連載では、日本人が”大好き”な保険の落とし穴、本質についてわかりやすく説明していきます。毎週水曜日に更新しますのでお楽しみに!

橋爪 健人 保険を知り尽くした男

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はしづめたけと / Taketo Hashizume

1974年東北大学卒、1984年米国デューク大学修士。日本生命保険に入社後、ホールセール企画部門、米国留学、法人営業部門を経て米国日本生命副社長。帰国後、損保会社出向、ジャパン・アフィニティ(保険ブローカー会社)代表取締役を経て2004年独立。企業向け保険ビジネスのコンサルタントとして活動。著書に『日本人が保険で大損する仕組み』(日本経済新聞出版社)

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