なぜロシアでは、日本食ブームなのか モスクワでは「あの外食チェーン」に長蛇の列

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最後は、資源屋らしく、資源の話をからませて終わりたいと思う。

2017年以降、ロシアは復活する。中国から乗り換えも?

私は、いずれ資源価格が息を吹き返してきた時、ロシアは再び主導的な立場に戻って来ると考えている。では、それは何時になるのか?ズバリ言えば、2017年には再び資源ブームが来るだろうと予想している。その主な理由は、今は中国の国内景気の落ち込みから国際市況に影響が過大に出ているが、在庫調整が一段落すれば再び力強い内需の回復が期待できると考えているからだ。

最も大きな要素は原油市況だが、現在の価格はやや行き過ぎであり今後はなだらかな回復基調にならざるを得ないのではないか。米国のシェールオイルにしても50ドルではやっていけないから最終的には70ドル~80ドルレベルで落ち着くのではなかろうか?

また、ウクライナ紛争も全面戦争に発展する可能性は少ないと考える。というのも、欧米の経済制裁とロシアからの対抗措置はどちらの陣営にも得にならず、1~2年で秩序を取り戻すのではないだろうか。こう考えると今のロシアの危機感は、むしろ中長期的な経済発展には良い影響が出てくるという見方をするロシア人も多い。

実際2008年のリーマンショック直後、ロシアでは石油依存体質を改め、自国産業の育成とイノベーションを推進することなどの意見が真剣に討議されたが、意外にショックからのV字回復が早く原油依存体質に後戻りしてしまった。ところが、今回は欧米からの制裁がトリガーを引いたため、プーチン大統領を本気にさせてしまった。

本格的な経済の回復までには、まだ時間は必要だ。だがロシアの方向性は定まったのではなかろうか。もし予想通り2017年から資源ブームが再来したら、その時のロシア貿易は、欧州とは一定の距離を持ち、アジア諸国との距離感がいっそう近くなると予見している。

原油価格が暴落しようが、為替水準が安くなろうが、市中金利が上がろうが、経済制裁を受けようが、ロシアの天然資源は存在していることには変わりはない。日本の隣国であるロシアの地図上の位置が変わるわけでもない。日本との地政学的関係は不変である。日露関係を考えるとき、多くの問題点はロシア側にあるとわれわれは考えやすいが、実際には日本側の無関心にも問題があるとの見方も無視できない。

残念ながら、一昔前はロシア貿易の専門家は沢山いたが、今では専門家が不足しており、日本企業のロシアへの理解度や興味も低いように思われる。一方で、日本の最大貿易相手国である中国は軋みをあげ始めた。中国の対日感情は未だに改善する雰囲気はない。人件費高騰から、そろそろ中国工場を精算することを考えている日本の経営者はかなりの数にのぼる。率直な現場感覚からいえば、今こそ、中国からロシア貿易に乗り換える好機だという逆張り発想が直観的に当たっているような気もする。

今のロシアの状況を見るにつけても、今こそロシアと日本が友好的な経済互恵関係を推進して手を結ぶ時だと現場感覚から考えるのは私だけではないはずだ。ロシア側の視点からすれば、ロシア側から日本を眺める「逆転地図」のように、ロシアと日本はもっとも近い隣人なのである。

中村 繁夫 アドバンストマテリアルジャパン社長

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なかむら しげお / Shigeo Nakamura

レアメタル(希少金属)の専門商社「アドバンスト・マテリアル・ジャパン代表取締役社長。中堅商社・蝶理(現東レグループ)でレアメタルの輸入買い付けを30年間担当。2004年に日本初のレアメタル専門商社を設立。著書に『レアメタルハンター・中村繁夫のあなたの仕事を成功に導く「山師の兵法AtoZ」』(ウェッジ)、『レアメタル・パニック』(光文社ペーパーバックス)、『レアメタル超入門』(幻冬舎新書)などがある。

 

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