政府検討「自衛隊地下施設へ住民避難」が愚策な訳 シェルターとして使用するには課題だらけ

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まず、国家安全保障戦略は、総合的な国力を用いる戦略的なアプローチとして、外交努力、防衛体制の強化、政府横断的な政策、経済安全保障など7項目を挙げている。その中で自衛隊地下施設は「防衛体制の強化」、住民避難は「政府横断的な政策」と、それぞれ別の施策として記載している。

次に、国家防衛戦略は、防衛力の抜本的な強化に当たって重視する7つの能力の1つとして、「持続性・強靭性」と「機動展開能力・国民保護」を挙げている。自衛隊地下施設は前者で「主要司令部の地下化・構造強化」、住民避難は後者で「機動展開能力を住民避難に活用し、国民保護の任務を実施」と表現している。

最後に、防衛力整備計画は、自衛隊地下施設について「主要な司令部等を防護し、粘り強く戦う態勢を確保するため、主要司令部等の地下化・構造強化・電磁パルス(EMP)攻撃対策」するとしている。

そして住民避難については「(特に南西地域において)自衛隊の機動展開のための民間船舶・航空機の利用の拡大について関係機関等との連携を深めるとともに、当該船舶・航空機に加え自衛隊の各種輸送アセットも利用した国民保護措置を計画的に行えるよう調整・協力」するとしている。

安保3文書に地下施設への住民避難は記載されていない

安保3文書の関連内容を要約すると、司令部など重要施設を地下に設置して強靱化し、自衛隊の継戦能力を向上する施策と、南西諸島への機動展開に民間船舶や航空機を活用するとともに、それらを用いた島民の避難にも協力する施策が、それぞれ別に記載されている。つまり、自衛隊地下施設への住民避難については記載されていないのだ。

筆者は、防衛省がこの施策を実際には検討していなかったのではないかと推察する。一方で、複数の政府関係者の話として報道された事実もある。

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