ゼロコロナ緩和でも経済が回りそうにない中国 ファンキー末吉が見た中国広州・マカオでのドタバタ

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ご覧のとおりガラガラである。ちなみに出番前ではない、イベントの真っ最中でこの入りなのである。

マカオでのコンサート会場。用意された席の前方にしか客がおらず、ほぼがら空き(写真・筆者撮影)

前述の「张蔷(ZhangQiang)」や私がツアーを廻っている布衣の場合は、ライブハウスでのチケットの売り上げが収入なので、客の入りが悪いと興行が成り立たない。そのため中止にしたり延期にしたりするが、このような商業イベントでは歌手にとって客の入りは関係ない。

とくにこのような無料イベントの場合、マカオ政府なのかマカオタワーなのか、どこかしらが予算を引っ張って来て興行を打つわけで、歌手は出演を許諾した段階で半金をもらい、別に中止になっても損はしないし、興行側も予算があってそれを使っているだけなので誰も損はしない。

私も地方のロックイベントなどによく参加したが、そんなに客が入ってなくてもちゃんとギャラがもらえるからくりはここにある。とくに昔は、国営企業や政府のイベントはいくらでも予算があって強かった。

しかしゼロコロナが緩和されたと言っても、中国のコロナ禍は今まさに始まったばかりである。国民のほとんどが病気で寝込んでいるとしたら、経済を回すもへったくれもない。

中国政府「ウイルスから14億の人口を守った!」

歳を越したら中国の旧正月「春節」が始まる。健康コードの提示もPCR検査の必要もなくなって、感染者も自主隔離だけで何の気兼ねもなく里帰りができる。今でこそ感染爆発だと言われているが、春節明けにはさらに大爆発することは明白であろう。

2022年12月15日、『人民日報』に長大な評論「3年にわたる感染症対策、私たちはこのようにして心一つに駆け抜けてきた」が掲載された。

「この3年、私たちは厳しいコロナとの戦い、歴史に残る試練をくり広げてきた。100件以上もの感染拡大に適切に対策し、5波にわたる世界的流行の波を乗り越え、ウイルスが最もも凶悪な段階から14億以上もの人民の生命と健康を守った」

そしてどういうわけかその手綱を一気に緩めた。「コロナは恐ろしい伝染病である」という主張から、一気に「コロナは怖くない」と躍起になって宣伝している昨今。ゼロコロナ時代が緩和された今も、経済はまったくまわっていないというのが中国で暮らす私の実感である。

そのような中、中国政府は2022年12月26日、新型コロナウイルス対策を翌2023年1月8日から変更すると発表した。強制的な隔離措置など厳しい対応を取る感染症に分類してきたが、隔離を行わない感染症へと引き下げ、海外から中国に入る際に義務付けている集中隔離を撤廃する。

これによって、23年1月22日の春節(旧正月)の連休に向けて多くの中国人がこのままの形で日本に入国して来る可能性が大きい。日本政府は水際対策を検討するべきであろう。

ファンキー末吉 音楽家

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ふぁんきーすえよし / Funky Sueyoshi

1959年、香川県坂出市生まれ。1980〜90年代に爆風スランプのドラマーとして活躍。大ヒット曲「Runner」「リゾラバ」などの作曲者でもある。現在、日本と北京で音楽活動を精力的に続ける。著書に『中国ロックに捧げた半生』『日本の音楽が危ない~JASRACとの死闘2899日』『平壌6月9日高等中学校・軽音楽部北朝鮮ロック・プロジェクト』『大陸ロック漂流記―中国で大成功した男』『ファンキー末吉の10日で覚える「ひとこと」中国語会話』など。

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