2023年政局「反撃」高市氏vs「存在感」稲田氏の行方 ダークホースは青木氏の秘蔵っ子「女性議員」

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高市氏は1993年初当選でここまで9期、稲田氏は2005年初当選で6期目だ。稲田氏にとって高市氏は、2歳年下ながら政治の世界では先輩にあたる。その稲田氏は、2021年の自民党総裁選挙で高市氏を支持した。

同年9月29日に行われた自民党総裁選挙。その日、朝からグランドプリンスホテル高輪に詰めていた筆者は、勝敗が決まった後、会場から出てきた稲田氏にマイクを向けた。

「憲法改正、外交防衛、エネルギー政策、私と思いを共有している高市さんを応援してきました。結果は残念ですが、岸田新総裁のもと結束していきたいと思います」

それが今回は一変した。稲田氏をよく表す言葉に、野党時代の2012年4月、「稲田朋美さんと道義大国を目指す会」で発したこの言葉がある。

「“国民の生活が第一” なんて政治は間違っていると思います。私たちの今の生活だけが大切なのではなく、先人から引き継いできた大切なものを、私たちの子孫に引き継いでいく責任を果たすのが政治家の役割だと思っています」

当時の民主党・小沢一郎氏のキャッチフレーズを痛烈に批判したものだが、これが保守派の政治家、稲田朋美の矜持なのだろう。

稲田氏を政調会長や防衛相に抜擢し、高市氏に続く女性政治家として引き立てたのは安倍氏だ。一時は「安倍氏の秘蔵っ子」とまでいわれたが、ジェンダー平等の活動に舵を切り始めると安倍氏とは距離ができた。代わりに「秘蔵っ子」のポジションに割って入ってきたのが、先輩の高市氏だ。

自民党総裁選挙に高市氏は出馬し、一方の稲田氏は出馬を見送らざるをえなかったのは、安倍氏という後ろ盾の有無によるところが大きい。総裁選挙では国家観を共有する高市氏支持に回った稲田氏だが、安倍氏なき安倍派の動き、岸田政権の低空飛行などから、「時は今」と判断したとしても不思議ではない。

元防衛相なので防衛問題は得意だ。福井県選出なので原発推進には一家言ある。弁護士のキャリアもあるため女性活躍やジェンダー平等の政策にも強い。しかも、これらの問題は、いずれも岸田政権が直面しているものばかりである。政策面で見ても、稲田氏が再び表舞台に躍り出る環境は整いつつある。

岸田首相離れを明確にした高市氏とは対照的に、まず防衛問題で岸田首相に接近した稲田氏。高市氏とは真逆の立ち位置で、ポスト岸田候補として輝きを取り戻しつつある。

ダークホース「ステルス型」の小渕氏

存在感を増す高市氏と稲田氏以外にも注目すべき人物がいる。それが小渕氏である。小渕氏は現在、自民党内で組織運動本部長という立場にある。一見地味な地位だが、地方組織の窓口であり、衆議院小選挙区の10増10減で区割り変更に伴う調整にもあたる重要ポストである。

高市氏と稲田氏が自ら発信することで存在感を示しているのに対し、小渕氏の発信力はあまり目立たない。いわば「ステルス型」の有望株だ。

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