2023年政局「反撃」高市氏vs「存在感」稲田氏の行方 ダークホースは青木氏の秘蔵っ子「女性議員」

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小渕氏といえば、故・小渕恵三元首相を父に持ち、麻生内閣時代、34歳で初入閣(少子化、男女共同参画担当相)したサラブレッドである。2014年9月に経産相として再入閣した際は、公職選挙法違反疑惑が報じられてすぐ辞任に追い込まれ、地元関係者が電動ドリルでパソコンのハードディスクに穴を開け証拠隠滅を図るという事態に発展している。

「小渕優子」と検索すれば、いまだに「ドリル」というワードが引っ掛かってくるのは「負の遺産」というべきだろう。

その小渕氏を娘のように可愛がってきたのが、小渕内閣で官房長官を務めた青木氏である。2022年11月21日、青木氏は、岸田首相や安倍派を束ねる森元首相と会談した。場所は3人の母校である早稲田大学の大隈庭園。そこに早稲田の大学院を修了した小渕氏も参加して、会食は2時間あまりにおよんだ。

この席で青木氏は、次の内閣改造や自民党役員人事で小渕氏の抜擢を強く岸田首相に要請したのではないか。それも官房長官、あるいは自民党政調会長といった要職で、と推測する。

小渕氏入閣の話は、2022年8月10日の内閣改造でも上がったが、このときは小渕氏が所属する茂木派の茂木氏と麻生派を率いる麻生氏が反対し、入閣には至らなかった。しかし、小渕氏は麻生氏に連合の芳野友子会長を引き合わせ、区割り変更に伴う支部長の選定で汗をかいてきた。

ドリル話は8年も前のこと。疑惑をめぐり本人の説明責任が果たされていないことなど、我々メディアの人間ですら忘れてしまっている。88歳と高齢の青木氏が「目の黒いうちに」と迫り、小渕氏と良好な関係になった麻生氏が「うん」と言えば、岸田首相も「聞く力」を発揮せざるをえないだろう。

もし小渕氏が次の人事で要職に起用されれば、高市氏や稲田氏と並ぶポスト岸田の有力候補に躍り出ることになる。

寅千里を走り、卯は跳ねる

ポスト岸田という点で見た場合、軸となるのは茂木氏や森元首相が推す萩生田氏、あるいは菅前総理あたりになる。しかし、情勢次第では3人の女性政治家も十分候補になりえる。

株式相場の世界では、干支にちなんで「寅千里を走り、卯は跳ねる」などといわれるが、寅年の2022年、それぞれ異なる形で存在感を示した高市氏と稲田氏、そして小渕氏のなかで、卯年の2023年、跳ねることができるのは誰か、注目しておきたいものである。

清水 克彦 政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師

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しみず かつひこ / Katsuhiko Shimizu

愛媛県生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。京都大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得満期退学。在京ラジオ局に入社し政治・外信記者。米国留学後、キャスター、報道ワイド番組チーフプロデューサーなどを歴任。著書は『日本有事』(集英社インターナショナル新書)、『台湾有事』『安倍政権の罠』(ともに平凡社新書)、『ゼレンスキー勇気の言葉100』(ワニブックス)、『ラジオ記者、走る』(新潮新書)など多数。

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