野田元首相が語る「追悼演説」に秘めた政治の本質 真剣な議論のなかで、折り合うところを求める

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政策を大きく変更するというアナウンスもしてはいけない。うまく工夫して小出しに、小刻みに。イールドカーブコントロール(長短金利操作) や利上げ幅、マイナス金利はどうしていくのか。これは相当緻密な計画が必要でそのプレイヤーが大事です。日銀総裁含め、ものすごく神経を使いながらの改革になると思います。

野田佳彦(のだ・よしひこ)/1957年生まれ。1980年早稲田大学政治経済学部卒業後、松下政経塾、千葉県議会議員を経て、1993年衆議院議員初当選。2010年財務相、2011年首相などを歴任。2020年立憲民主党最高顧問(写真:尾形文繁)

財政改革のほうは、やることはたくさんあります。やはりプライマリーバランスの黒字化という目標を早くクリアしなくてはいけない。そのためには、独立財政機関のようなものを作り、これまでいい加減に出していた税収見通しや成長見通しを改める。

それから、これは痛恨の極みなんですが、私のときに特例公債法を複数年度化しました。ねじれ国会で特例国債を人質に取られて借金ができず、11月まで予算執行が滞るのを経験したので、複数年度やむなしとした。ですが、特例公債は本来国債発行のなかの特例で、複数年は特例の特例なんです。最初4年だったのを今度5年にしましたし。これはもう一度、1年ごとに改めないといけない。

あとは予備費の乱用の抑制。10兆円までいきましたからね。

井手:来年4月に日銀総裁が変わります。その方の資質ももちろん問われるでしょうが、財政と金融をどう一体的に変えていくか、もう一度日銀との合意形成も必要になるように思います。

政府と日銀の政策協定は見直すべき

野田:アコード(政府・日銀の政策協定)は見直しでしょう。2013年のインフレ目標2%を10年実現できなかったのは、失敗ということ。その総括も必要ですし、あれには政府も財政を健全化すると書いてある。政府も日銀も書いてあることをやっていない。それはもう見直しですよ。

お互いできることをどうすればいいか。そこから始めなくてはいけないと思いますね。

井手:イギリスのトラス前首相がわずか40日ちょっとで退陣したのは、減税だけでなく、市場との対話があまりに雑だったのも1つの要因だと思います。

野田:イギリスを他山の石としなければいけない。イギリスは、対GDP債務残高が日本よりはるかに少ない。その国でトラスノミクスは否定された。低い税収で高い成長を、という彼女の主張は、そんなことはありえないとマーケットの強烈な反応を招いたわけです。

ただ日本にはマーケットが機能するかという問題がある。イギリスの金融市場は健全だから、反応してトリプル安になった。日本の場合、例えば国債市場は日銀があまりにもモンスターになってしまっている。株式市場もETFを通じて筆頭株主になっている企業がたくさんある。マーケットメカニズムが相当機能を失っているわけです。

だとすると、財政当局による厳しいチェックと、やっぱり国会です。マーケットは早く直していかなければいけない。

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