巨大中国が「台湾侵攻」に踏み出す決定的理由 「ロシア暴走」の教訓は覇権国争いに生きるのか

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橋爪:うん、場合によってはもっと最悪なことも起こりかねない。

大澤:はい、そうですね。今後もしロシアが戦争に負けたとしても、広い意味での文明の衝突状態が続くとすれば、中国、インドが出てくると、もっと深刻な問題になります。

重要なことは、いま僕らに起きていることは、すべてつながっているということ。そのつながりをポジティブに利用する形で解決するしかないんですね。

コロナ危機でもそれがはっきりしたわけですが、コロナだけじゃない。気候変動の問題にしても、世界がいかに連帯に向かうかということが試されている。その場合に文明の衝突的な因子があると、いろんなことがうまくいかないわけです。

ほかの文明の場合は、ほっといても、経済的な意味でうまくいかないので弱体化していくんですよね。だけど、中国の場合は、改革開放以降、大変な成功を手中にしている。そういう状況の中でどうすればいいのか、誰にも見えないというか、少なくとも僕には見えないというのが今の現状なんですが、どうでしょうね。

中国は「新しい規格」を提供できるのか

橋爪:世界がつながっていて、まとまって対抗しなきゃいけないということと、覇権国、仕切り屋が複数あって、しかも文明の背景が違うから対立しなきゃいけないということは同時に起こるんですよ。これはちっとも矛盾することじゃない。

例えば二昔ぐらい前に、ビデオテープの規格でVHSとベータの覇権争いがあったじゃないですか。1つのほうが使う側には便利がいいに決まっているわけですよ。でも、2つが提案されて、ベータのほうが性能がよかったらしいんだけど、VHSのほうがメジャーなメーカーを複数押さえたことで標準規格を勝ち取った。だから、覇権があっても、覇権争いは起こるんですよ。

だから、西側世界がしばらく世界を仕切ってきて、いろんな規格を世界中に押しつけて、異なった文明は居心地の悪い思いをしながら従ってはきたものの、この規格でなくてもいいんじゃないかとみんな思っているわけだ。そのときに、別の規格が提案されて、そっちのほうが安く使えますというオファーが来たら、乗り換えることは十分考えられる。

今、中国と西側は、そういう関係になりかかっているんじゃないか。中国が世界中をこれで仕切るという新しい規格を提供する力があるのかどうか、世界はそっちに乗り換えるのかどうかという、そういう話なんですよ。

大澤:ああ、世界の規格がドラスティックに置き換わるという話なんですね。これはかなり怖い話ですよ。

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