英語月3万円も、保育園「別徴収の習い事」の深い闇 国の「上乗せ・実費徴収ルール」はかなり曖昧

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習い事については希望者だけが利用する「希望制」にすることで「保護者の同意を得ている」と捉えている自治体も多いようです。幼稚園の場合は、課外授業のような感覚になりますが、保育園や認定こども園の長時間保育の場合は、正規の保育時間中の保育が保護者の希望の有無で分けられることになります。

「お友だちがみんな希望していて子どもが仲間はずれになるのが嫌で、しかたなく希望した」という半強制的な状態も生まれています。切実な経済状態で日々ゆとりなく暮らしている人々の声は消えがちです。その結果、無償化前の応能負担の保育料を超える負担を強いられる家庭もあります。

「新制度」検討の場では「すべての子どもに質の高い教育・保育を」というフレーズが頻出していました。「すべての」という言葉には、待機児童問題の解消の意味もありましたが、子どもや家庭が差別されることのない公平な制度にするという理念がこめられていたと私は考えています。

新制度に参加する幼稚園、認定こども園、保育園は、さまざまな家庭や子どもに分け隔てなく質の高い保育(養護と教育)を提供するという制度検討時の理念に立ち返って、そのあり方を問われるべきです。無償化で生まれた家計のゆとりを園が別途徴収で回収するという流れが当たり前にならないように、国や自治体には修正をかけてほしいと思います。

また、「すべての子どもに質の高い保育を」という観点からは、保育の質に重要な影響を与える保育者の配置数や待遇の改善に優先して予算を割くことも必要です。

別料金の保育にそれだけの付加価値があるか?

払える人には質の高い保育を買う権利があると考える人もいるでしょう。筆者のこちらの記事もぜひ参照してください「『教育には保育園より幼稚園』と誤解する人の盲点」。

乳幼児期は、子ども自身の多様な体験によって心身のさまざまな機能の発達がバランスよく促される必要があります。そのためには、子ども一人ひとりが自分の興味・関心を広げ主体的に生き生きと活動すること(遊び)を活性化することが効果的であり、同時に保育者や子ども同士とのかかわりを通して、自尊心や自制心、コミュニケーション力や社会性を培うといった全人格的な教育が重要であると考えられています。

このことを理解している園の多くは、特色ある保育を行っていても、正味の実費を超えた高額な別途料金を徴収するようなことはしていません。

内容にもよりますが、別途料金を徴収する保育には、子どもの主体的な学ぶ意欲を無視した大人のためのサービスになってしまっているものもあります。保護者には、本体の保育の充実を見て園選びをしてほしいと思います。

もしも在園中の園の別途徴収に疑問をもったら園に説明を求めてみましょう。全体からすると、高額な別途徴収をする園は少数派であることを踏まえ、おかしいことはおかしいと伝えることも必要です。

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普光院 亜紀 「保育園を考える親の会」アドバイザー

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ふこういん あき / Aki Fukoin

早稲田大学第一文学部卒。保育園に子どもを預けて働く親のネットワーク「保育園を考える親の会」顧問・アドバイザー。保育ジャーナリスト。大学講師。著書「後悔しない保育園・こども園の選び方」(ひとなる書房)、「不適切保育はなぜ起こる」(2024年6月20日刊行、岩波新書)ほか多数。

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