東洋ゴム、「免震データ改ざん」の深刻度 2007年の不正の教訓は生かされなかった
「(皆さまとの信頼を)自ら崩壊させるような事態に直面し、痛恨の思いを抱いております」――。
3月13日。大阪市で開かれた、東洋ゴム工業の記者会見。山本卓司社長は苦渋の表情で語った。だが、過去の教訓は、生かされていなかった。
東洋ゴムの子会社、東洋ゴム化工品が2004年7月から2015年2月に製造・出荷した免震ゴム(高減衰ゴム)について、計55棟・2052基が、国土交通省の認定する性能評価基準を満たしていない”不適合な製品”だったことが判明した。取得した大臣認定のうち3製品は、技術的根拠がないのに認定を取得するため、”データを改ざん”した書類を国交省に提出していたという悪質さだ。後者については、自主的に認定の取り下げを申請し、国交省から取り消された。
免震ゴムは建築物の基礎部分として使われ、地震の揺れを吸収するために使われる。該当する東洋ゴム化工品製の免震ゴムを採用した建築物は、建築基準法第37条に違反した「違法建築物」の扱いになる。本来なら基準値に対して10%の誤差しか許されないが、今回不適合となった中には、最大で50%も異なる製品があった。
一人の担当者に10年も任せ切り
波紋は大きかった。東洋ゴムは当初、子会社製の免震ゴムが採用された建物について、「所有者の承認がない」ことを理由に、個別名を一切明かしていなかった。が、マスメディアによる報道が先行、長野市第一庁舎や舞鶴医療センター(京都府)などで、実際に使われていることが明らかになった。
消防庁舎に不適合品18基が設置された静岡県御前崎市によると、会見のあった13日夜に初めて知り、自主的に東洋ゴムに連絡したという。16日には東洋ゴム側の関係者が来たが、「具体的な対策を示してほしかったが、あまり内容のあるものではなかった」(御前崎市)。
業を煮やしたのか、3月17日には国交省が55棟のうち、「公共性が高い」と判断した15棟について、名称と所在地を公表した。
なぜこうした不正が起こったのか。浮き彫りになってくるのは、組織としての品質管理体制のずさんさだ。免震ゴムの評価については、10年間以上もたった1人の担当者(製品開発部課長)が担っていたとする。会社側は、専門性の高い仕事のため、担当できる人間が1人しかいなかったと説明。担当者の上司は複数交代したが、内容が専門的で、「この製品を知っている上司ではなく、担当者が恣意的に改ざんしても、非常にわかりづらい体制だった」(山本社長)。
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