「中二階」という柔構造、理念と現場の論理の狭間 日本社会、日本企業で重要な役割を果たしてきた

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『中二階の原理』伊丹敬之 著
中二階の原理 日本を支える社会システム(伊丹敬之 著/日経BP 日本経済新聞出版/1980円/296ページ)
[著者プロフィル]伊丹敬之(いたみ・ひろゆき)/国際大学学長。1969年一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。72年米カーネギーメロン大学経営大学院博士課程修了(Ph.D.)。その後一橋大学商学部で教鞭を執り、85年教授。経済産業省の審議会委員などを歴任。2005年紫綬褒章受章。

「中二階の存在があることによって、日本という社会空間は豊かになってきた」。この言葉から始まる本書のメッセージは、実にシンプルだ。建築において1階と2階の間に存在する、「中二階」の概念を多くの事象に文明論的に当てはめながら、これが日本社会でいかに重要な役割をはたしてきたかを説く。

例えば明治の「文明開化」のような大変革において、外来の文物、西洋からの概念や技術などが2階の部分だとしたら、「現場の論理」は1階。狭間にある中二階が両者の緩衝地帯として衝撃を吸収し、さらに原理そのものを換骨奪胎してきたことが、日本社会の特殊性だという。

「ねじれ」解消の原理とその重要性

古くは「漢字かな交じり文」という日本語特有の外来文化のアレンジ、明治の廃藩置県、戦後の農地改革などの事象にも、原理と現実の「ねじれ」は介在していた。それを受けとめる中二階の構造が、日本の企業経営においてどう機能してきたのか。経営戦略、組織マネジメント、企業統治などの観点から示される。

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