高卒の離職率はなぜ高い?「理不尽ルール」の深刻 企業選択の時間が短すぎるという問題がある

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厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況」に関する調査によれば、2016年就職者の離職率は39.2%、2017年が39.5%、2018年が36.9%となっている。

この調査が行われた時期は新型コロナウイルスの感染が始まる前で、景気が回復していると言われていた時期である。とはいえ、3年以内の転職では、働いて身に付けたスキルも少なく、待遇面でより良い企業への転職は難しいだろう。早い時期の転職は、生活基盤の脆弱さに結びつきかねず、将来の生活に悪影響を大きく及ぼす。

高校生の求人票公開がこれほどまでに遅い問題点

Yさんは高い離職率の理由を考え、下記のいくつかの問題点に行きついた。

その1つが、企業選択に与えられた時間が短すぎるという点である。

現在のスケジュールでは7月1日に求人票公開となっている。この時期は、高校は期末試験の真っ最中で、生徒が求人票をじっくり見るのは試験終了後になる。そこから1週間から10日程度で、会社見学に参加する。この間があまりに短いと、生徒を指導する過程で彼は感じていた。

■高卒求人の事業所規模別割合

もちろん、学校では前年度の求人票を使って必要な情報を読み取る練習をさせる。しかし、真剣に考えるのは実際に受ける求人票を見てからになるのは当然だ。求人票はパスワードを共有している高校のパソコンからインターネットでも見られ、教員が必要に応じて印刷する。

また、求人票を直接持参する企業もある。それらを教員が複数部コピーしてファイルにまとめ、就職希望の生徒たちが短期間で回し読みする方法が多くの高校で取られている。

部数の少ない求人票を多数の生徒が短期間に見て志望企業を決めるのは極めて難しい。まして、就職を目指す生徒たちの多くは、自分で何かを決める体験に乏しく決断が苦手で実は、企業の求人票の受付は6月1日から始まっている。受付と並行して公開していけば求人票をゆっくりと見る時間ができるはずだとYさんは提案する。

大学生や専門学校生の求人票公開が卒業の前年度の3月なのに、なぜ高校生にはこれほど遅くしなければならないのかと、彼は不思議がる。そこには「生徒への負担と学業への影響を最小限に抑える」というもっともらしい理由が付けられてはいるのだが。

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