市場大変動のリスクに個人投資家はどう備えるか ヘッジファンドGCIの山内英貴CEOが現状を解説

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――日銀の政策変更の可能性に言及されましたが、今、市場の見方がいちばん分かれるのが、2023年も円安が進むのか、どこかで円高に転換するのかということですね。

日本売りで円安が続くという見方もあるが、私はたぶんそうならないとみている。少なくともいったんは円高に振れるはずだ。

世界のマネーフローを見ると、平常時は債務国のアメリカは基軸通貨国でもあるので、日本のような債権国からマネーが集まるが、それを成長力のある新興国に再投資している形だ。債権国→アメリカ(ドル)→新興国という流れだ。

リスクオフが進めばいったん円高に

この流れがリスクオフに転じると、いったんドルに戻ってくる。今はそのフェーズのさなかにありドルにお金が集中し独歩高になっている。しかし、そうした中で新興国の経済が苦しくなってくると、アメリカの景気も悪くなって、世界全体がリスクオフになり、債権国の手元にお金が還流することになる。新興国→アメリカ(ドル)→債権国というマネーの流れで、リスクオフには2段階ある。

1990年代には前半に日本叩きが起きて、円高ドル安になったが、半ばにルービン財務長官が「強いドルは国益」として、ドル高になった。ところが、これが90年代末のアジア通貨危機につながった。

今回はどうかと考えると、アジア各国は外貨準備も厚くなっており、当時のようなドルペッグ制ではなく、変動相場制なので危機は起きにくい。中国は管理相場だが、資本規制を行っている。そうなると、円が注目される。

今は、介入でも円安が止められないと思っている人が多く、円を積極的に買う人は少ない。しかし、そこで、日銀の政策変更、マイナス金利やYCCを修正する動きがあれば、一気に円高に動く可能性もある。いま、日銀はマーケットメカニズムに逆らって金利を抑えつけているので、いったん逆方向に動くと大きくなる可能性がある。例えば、思いのほかインバウンドが成功して日本人の賃金が上がるとか、思いもかけないイベントで金利が跳ね上がるかもしれない。

また、過去を振り返っても、政策的な相場管理が限界に達したときには予想を超えるテールリスクが顕在化することが繰り返されてきた。1990年代の欧州通貨危機・アジア通貨危機やスイスフランショックなど枚挙に暇がない。市場と対峙して、政策的に相場管理が行われているところにはとくに注意が必要だと思う。

トリガーとなるイベントが何かは今の時点ではだれにも正確には予見できないが、そういう発火しやすい状態にあることは意識しておく必要がある。

大崎 明子 東洋経済 編集委員

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おおさき あきこ / Akiko Osaki

早稲田大学政治経済学部卒。1985年東洋経済新報社入社。機械、精密機器業界などを担当後、関西支社でバブルのピークと崩壊に遇い不動産市場を取材。その後、『週刊東洋経済』編集部、『オール投資』編集部、証券・保険・銀行業界の担当を経て『金融ビジネス』編集長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営法務)修士。現在は、金融市場全般と地方銀行をウォッチする一方、マクロ経済を担当。

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