市場大変動のリスクに個人投資家はどう備えるか ヘッジファンドGCIの山内英貴CEOが現状を解説

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山内 英貴(やまうち ひでき)/GCIアセット・マネジメントCEO。一般社団法人京都ラボ代表理事。1963年生まれ。日本興業銀行でトレーディング・デリバティブ関連業務に従事した後、2000年4月に独立し、ヘッジファンド運用に特化した資産運用会社グローバル・サイバー・インベストメント(現GCIアセット・マネジメント)設立。2007年4月より東京大学経済学部非常勤講師。著書に『エンダウメント投資戦略』(2015年、東洋経済新報社)など(撮影:梅谷秀司)

ただ、バブルの崩壊を別のバブルを起こして回復させるやり方は限界にきた。

リーマンショックが起きた時には、民間に債務が積み上がっていたので、金融緩和と財政拡張で底割れを食い止めざるをえなかった。だが、その後、政策を正常化しつつあったのに、コロナ禍において大規模なバラマキが行われ財政規律が緩み、これが低インフレ・低金利を終わらせる最後のとどめになった。

乾ききった薪に点火する形で高インフレが起き、対応が後手に回った。1970年代を見ても、インフレはなかなか収まらなかったので、時間がかかるかもしれない。

高インフレ下では金融・財政の引き締めが必要だが、インフレで実質所得が減る中、どういう人の声が大きいかで政策が左右される。

日本だけ中央銀行が緩和を続けているとか、多くの先進国で金融政策は引き締めの方向なのに、財政は拡張しているとか、各国間、各国内でも政策に整合性がないため、市場のボラティリティは高まりやすい。

軟着陸をメインシナリオに、テールリスクに備えを

――銀行や証券などのリスクテイクにはリーマンショックで規制が強化されたため、今はノンバンクのファンドなどにリスクが積み上がっているとみられていますね。

ファンドから不動産やプライベートエクイティなど流動性の低い資産への投資が拡大してきた。時価評価が頻繁に行われる市場ではないので、要注意だ。金利が上昇すれば資産や事業の将来キャッシュフロー、成長の蓋然性が変わるので、現在価値も変わっているはずだが、それがすぐに時価に反映されない。

――投資家としてはどういった対処を考えればよいのでしょうか。

軟着陸がメインシナリオだがFRBのパウエル議長も言っているように、ナローパスだ。テールリスク(起こる確率は小さい想定外の暴落・暴騰のリスク)が顕在化した場合にも備えておく、というのが基本スタンスだ。われわれとしては、オルタナティブ投資(株や債券以外への資産分散や投資手法の分散)によって少しでもリスクを抑えることを志向している。テールリスクとしては、例えば「日本銀行の政策変更」が挙げられる。これは起きればインパクトが大きいし、以前よりもその可能性は高まっている。

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