大紛糾の「都立高校入試」乱暴すぎる改革の中身 「有利な人」「不利な人」を生む驚きのカラクリ

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来年の入試では、トップ校においてESAT-J不受験者が多く合格するということが起こってもおかしくはありません。

英語のスピーキングが得意な子以外は、みんな不利

このほかにも大きな問題があります。英語のスピーキングが得意な子以外、この入試「改革」が不利に働くからです。

都立高校には、入試の点数のほかに通知表の点数である「調査書点(内申点)」が加算されます。

この調査書点の点数は、通知表の点数に一定の係数をかけて、英数国理社のそれぞれの最高得点が約23点になるように計算されます。ESAT-Jの点数も、満点を20点として「調査書に記載される点数」として算入されます

つまりこれまでの入試に比べて、英語の配分が20点多くなるのです。

単純に考えれば、スピーキングは「英語の4技能」のうちの1つですから、調査書点の「英語 23点」のうちの4分の1を占めていると考えられます。授業でもスピーキングは行われていますし、テストもあります。

それなのになぜか、スピーキングだけ二重に点数が計上されることになります。それも満点が20点というかなり重い点数としての加算です。

入試の判定における英語、とくにスピーキングの比重が大きくなってしまえば、ほかの科目が得意な子は不利になります。数学が、国語が、理科が、社会が得意な子は、不利になるのです。英語が得意な子であっても、スピーキングが苦手なら、状況は同じです。

これについて東京都教育庁から、英語のスピーキングの比重だけが大きいことに対する合理的な説明がなされたことは、これまで一度もありません。

都内でも地域格差がくっきり

3年前の大学受験の民間テストと違うのは、一見すると金銭的な自己負担がない、ということです。大学入試では複数の民間試験が採用され、かつそれがすべて自己負担だったために、大きな批判につながりました。

今回はテストの運営はベネッセ1社であり、税金で行われるために、表向き各家庭の自己負担はありません。税金が民間企業1社に流れるという問題はあるものの、お財布からテスト代が消えることはないわけです。

ただ、ESAT-Jは、ベネッセが主催するGTEC(ジーテック)というテストに、問題が類似しています。そのため、塾で対策問題を練習する子も出ています。大学受験と同じく、このような直接的な経済格差の問題が、今回もあることは否定できません。

しかし、それ以上に懸念されるのは、東京都内でGTECを実施している中学校と、していない中学校があるということです。

次ページ公平性が求められる入試において「格差」が反映される可能性
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