カプコン、売り上げ激減でも株価高騰のナゼ 株式相場は何を"材料"に買うのか

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創業者の辻本憲三会長。「外注丸投げではダメ」として、構造改革を先導した(撮影:ヒラオカスタジオ)

その結果、外注していた赤字タイトルを絞り込んだことで利益を20億円改善し、さらに内作タイトルの効率化で16億円の利益を捻出。売上高が大幅に落ち込んでも、利益は落ちない収益体質をこの2年で作り上げた。足元の株価上昇も、こうした構造改革の”成果”を評価したものと考えられる。

改革と並行してダウンロード販売も強化中だ。店頭販売を介さないダウンロード比率が上がると、利益率向上や在庫リスクの低減が期待できる。さらに本編の追加ゲームを配信することで、ファンを息長く囲い込むことが業界トレンドになりつつある。

出遅れたカプコンも今期、旧作や廉価版ゲームを積極的に売り出している。パッケージ販売は前期より470万本も落ち込む見通しだが、ダウンロード販売は70万本増の550万台を予定。原価ベースでは7億円の改善効果を出している。2月25日に配信を開始したばかりの「バイオハザードリベレーションズ2」では、各話のダウンロード販売を手掛けている。

最大の課題が残っている

しかし、最大の課題を乗り越えることが出来ていない。スマートフォンゲームを筆頭としたモバイルゲームでのヒット創出だ。従来からスマホゲームの開発は進めてきたが、カジュアルゲームが中心だった。しかし「パズル&ドラゴンズ」の大ヒット後、スマホゲーム全体が重厚な内容へとトレンドが移り変わる中で、カプコンは遅れを取ってしまった。

「ダウンロードしてからの課金がうまくいかず、運営プロセスのノウハウが不足していた」(辻本会長)という反省から、大阪のモバイル部隊と、従来からソーシャルゲームを開発・運営していた東京のモバイル部隊を融合した。2015年内に配信予定の新作スマホゲーム「モンスターハンター エクスプロア」がヒットするかどうかで、その成果が試されることになりそうだ。

今後の新作ゲームのパイプラインについては、詳細を明らかにしていない。しかし家庭用ゲーム中心のビジネスモデルから、PCやスマホ向けゲームなど、すそ野拡大への準備は整いつつあるようだ。

構造改革で体質改善を実現し、転換期を迎えていることは確かだが、ヒット作というピースが足りない。果たして、浮き沈みの激しいゲーム業界で新たなヒットを生み出し、再び成長路線へ復活できるのか。今年がその大きな試金石となりそうだ。

前田 佳子 東洋経済 記者

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まえだ よしこ / Yoshiko Maeda

会社四季報センター記者

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