「報酬ダウン転職」を選ぶ人の"胸の内" リスクを取る人たちの判断基準

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たとえば、総合商社に勤務していたDさん(27歳)は大学の先輩の立ち上げたソーシャルアプリのベンチャー企業に転職。報酬は3分の2以下に下がりました。ただ、

「大学時代から尊敬していた先輩が立ち上げる会社で働けるなら、年収が下がることなど気になりませんでした」

と転職の熱意を語ってくれました。ちなみにDさんは独身。東京生まれで家族と同居。こうした生活環境に恵まれていることも、報酬ダウン転職を判断できた理由かもしれません。ただ、Dさんは年収ダウンが今後も続くとはかぎらないと思っているようです。

「下がった年収を将来的に取り返すことは、十分に可能と判断しています」

とのこと。現在の年収ダウン分は投資であり、いつか回収するという意欲はあるのです。

その意欲を裏付けるものは、先輩社長から付与されたストックオプション。立ち上がったベンチャー企業の新株予約権のことで、株式公開できれば大きな利益が得られます。

あるいは、食品商社に勤務していたSさん(33歳)は新興系の食品メーカーに引き抜かれましたが、年収は2割以上もダウン。周囲は猛反対したようです。ただし、それでも決断したのは、自分が頑張ったときに「上ブレ」を期待できるから。

この会社は基本給が低いものの、決算ボーナスが業績連動で大きく出る可能性があります。会社の成長性を鑑みて、転職するという勝負を選んだのです。まさに将来的に得られる可能性の対価に懸けて転職したのでしょう。

キャリア上の対価を期待する人も

中には報酬に加えて、キャリアにおける対価を期待して報酬ダウン転職をする人もいます。大企業で安定収入が期待できるものの、管理職クラスが人余り状態。この閉塞感のある職場で、年配社員の定年を待ってポストの割り振りを期待する人生になるくらいなら、

「自分の頑張りでキャリアアップが望めそうな会社を選びたい」

と考えて、年収ダウンを受け入れた転職をする人。当然ながら、その願いがかなわず、年収ダウンしたままでキャリア人生を終える可能性もあります。ただ、将来を見越してリスクを知りつつ挑戦を試みた人には、成功をつかんでほしいもの。黒田投手であれば、日本プロ野球界の指導者として将来を牽引してほしいと願います。

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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