元朝日記者語る「メディアが外部批判恐れる」実情 「朝日新聞政治部」著者、鮫島浩氏が斬る!

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鮫島浩
『朝日新聞政治部』の著者で、朝日新聞時代は政治部のデスクとしてだけでなく、調査報道を行う特別報道部でも活躍した鮫島浩氏(写真:濱﨑 慎治)
5月末に発売された『朝日新聞政治部』が4.8万部と政治ノンフィクションとしては異例の売り上げとなっている。著者の鮫島浩氏は、39歳で政治部デスクに抜擢され、スクープ記事を連発した朝日新聞のエース記者だったが、2014年に手がけた福島原発事故をめぐる「吉田調書」報道が多くのバッシングを浴び、当時の社長が辞任する事態に発展。鮫島氏も一転「捏造記者」のレッテルを貼られてしまう。『朝日新聞政治部』ではその一部始終を、登場人物を実名で生々しく伝えている。
現在は朝日新聞社を退社し、自身のメディアを通じて言論活動を行う鮫島氏。その目には、古巣である朝日新聞、ひいてはメディア業界の「今」はどう映っているのか。本年のノンフィクション本大賞の候補にもなっている本書が問いかけるメッセージについて鮫島氏に聞いた。

外部の批判を恐れるように

――まず、元朝日新聞記者のお立場から、昨今の新聞報道についてどう感じていますか。

朝日新聞に関して言うと、外部の批判を怖れ、忖度するメディアに成り下がっていますよね。

最近も象徴的な出来事が立て続けにありました。2022年7月15、16日付朝刊の「朝日川柳」に、安倍晋三元首相の銃撃事件を風刺する読者投稿の川柳が掲載されましたが、ネット上で「不謹慎だ」などと批判が殺到した。すると一転して「ご指摘やご批判は重く、真摯に受け止めています」と早々に白旗を揚げました。

もう1つが、同年7月19日付朝刊などに掲載された社会学者・宮台真司氏の「元首相銃撃 いま問われるもの」というコラムで、自民党と統一教会の関係について発言した箇所が「社会部の取材で確かめてからでないと掲載できない」との理由で削除されました。本人がネットメディアへの取材に応じたことで明らかになりました。

――朝日新聞のみならず、メディア全般が世間の批判に対して極度に敏感、あるいは、不寛容になっているようにもみえますが、世間の同調圧力が強まっていることもあるのでしょうか。

次ページ同調圧力や表現の侵害に抗うのが本来の新聞の姿
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