今回のコラムでは、日本銀行による大規模な金融緩和策が本当に正しいのかどうかを、アメリカや日本の経済を比較しながら改めて検証したいと思います。
日銀が大規模な量的緩和を行うのに賛成する経済識者、政治家、メディアなどは、「2%程度のインフレが好ましい。アメリカの経済金融政策を見習ったほうがいい」といった発言をよく主張していましたし、今でもそのように主張しています。
インフレ政策で、アメリカの一般国民は貧しくなった
しかしながら、私は「経済金融政策は庶民のために行うべきである」と考えているので、彼らが賛美するアメリカの歴史をありのままに検証してみれば、そういった主張の類は明らかに間違っていることが浮き彫りになります。
なぜなら、アメリカのインフレ経済政策は、資源価格の高騰が始まった2000年以降も、住宅バブルが崩壊した2007年以降も、国民の実質賃金を引き下げてきたにとどまらず、格差が拡大していくのを助長してきたからです。
この連載でも過去に取り上げましたが、米労働省および米国勢調査局の統計をもとに、2000年を100とした場合のアメリカの名目賃金と消費者物価指数の推移を振り返ってみると、2013年のアメリカ国民の平均所得は97.9と下がっている一方で、消費者物価指数は135.3と上昇してしまっています。
これがどういうことを意味しているのか、ごく普通に考えれば、おわかりいただけるでしょう。
念のため、日本の厚生労働省が計算しているように、指数化した名目賃金を消費者物価指数で割り返して実質賃金を計算してみると、たった13年間で実質賃金は72.4まで下がってしまっているのです。
グラフを見ていただければ一目瞭然ですが、アメリカ国民の生活が一貫して悪化してきた主な理由は、決して住宅バブル崩壊やリーマンショックのせいだけではありません。
アメリカが、「21世紀型インフレ」と「20世紀型インフレ」(この言葉についての説明は2月10日のコラム「なぜ21世紀型インフレは人を不幸にするのか」を参照)の区別が付かずに、インフレ目標政策に邁進してきた当然の帰結であるわけです。
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