有料会員限定

ゼネコンが奮起する「環境ビジネス」3つの領域 狙うはビル木造化、再エネ、環境配慮コンクリ

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 最新
拡大
縮小

企業側でも、環境に配慮した経営を加速させたいとの意向が年々強くなっている。冒頭のOKI本庄工場のように「地域に貢献したい」との考えから、地元木材の使用を要望するケースも増えているようだ。

「いまはオフィスビルや工場などの建物を新築、あるいはリニューアルする際は、顧客から必ずと言っていいほど『地域の木材を使えないか』という相談を受ける」と、梅森氏は明かす。コストとの兼ね合いで、結果的に木材の採用をやめる顧客もいるが、建築物の木造化に対する「引き合いは多い」(梅森氏)という。

ビルの木造化を進めていくうえで、今後の課題は量産化態勢への備えだ。大成建設には設計スタッフが全国に1000人ほどいるが、そのうち木造設計に対応できる人材は10数名程度しかない。梅森氏は「5年後には、設計スタッフ全員が木造設計に対応できるようにしたい」と意気込む。

都心に木造の高層オフィスビル

ビル木造化技術の開発ではスーパーゼネコンの竹中工務店が先行している。竹中は三井不動産と組んで、東京・日本橋に地上17階建ての高層木造賃貸オフィスビルを2025年に竣工する計画だ。

木造建築に強い住友林業も準大手ゼネコンの熊谷組と共同で、中規模木造建築ブランドを展開している。SDGs対応など環境意識の高まりを受け、オフィスビルや工場などの木造化ニーズはますます高まってきそうだ。

「再生可能エネルギー分野に進出したいのだが、何から手をつけてよいのかさっぱりわからない」。スーパーゼネコン・大林組にはここ数年、中堅ゼネコンの幹部からこのような相談が増えているという。

大林組は再生可能エネルギー事業を収益柱のひとつとして育成する方針で、急ピッチで展開を進めている。その動きは同業他社から注目され、ときには前述のようにアドバイスを求められることもある。

大林組の再エネ事業の特徴は、手がける分野の広さにある。2021年4月に新設した「グリーンエネルギー本部」を軸に、太陽光、バイオマス、陸上および洋上風力発電などを幅広く推進。加えて、大分県において地熱由来の水素の製造や、ニュージーランドにおいてメガワット級の水素製造供給施設の整備にも取り組んでいる。

大林組の大分県の施設では次世代エネルギーとして注目される水素を製造(写真:大林組)
次ページ再エネ分野へ500億円を投資
関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
特集インデックス
ゼネコン 両利きの経営
不動産シフトでもくろむ「非建設分野」の強化
狙うはビル木造化、再エネ、環境配慮コンクリ
工事費の増加分は発注者側もリスク分担を
任天堂創業家に「会う予定は現時点ではない」
インフラ事業の黒子、子会社の秘められた正体
受注競争の激化と残業時間の新規制が直撃
市場が懸念する「再開発」と「SEP船」の行方
「関西や木造に強い」中堅以下の買収を渇望
「5つの指標」で厳選、独自ランキングを一挙公開
福島や宮城など東北でも倒産が増加傾向に
国内市場の先細り見据えて食いぶちの確保急ぐ
異業種の大手企業が建設市場に見いだす鉱脈
東洋建設関係者は提示された経営方針に失望
鹿島・竹中・清水建設が幹事、技術革新起きるか
DCに巨額投資も、本音は「恐る恐る参入」
危機の教訓を経て、提案力が必要な時代に
売上高1兆円に向け、戸建て販売を軸に急成長
地域別・経営の危険度が高い建設会社はここだ
新風で「レガシー産業」は今度こそ変われるか
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT
有料法人プランのご案内