日本の半導体を45年見てきた重鎮の「強い危機感」 もう失敗できない「半導体支援」、なぜ今必要か

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次々と打ち出される半導体産業復活への国策。「半導体・デジタル産業戦略検討会議」で座長を務める東哲郎・東京エレクトロン元会長に、今後の日本の半導体産業について聞いた。

1977年の東京エレクトロン入社以来、45年間半導体産業を見てきた東氏は、東洋経済のインタビューに対し90分にわたって日本の半導体産業がおかれた現状について語った(撮影:梅谷秀司)

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国策として半導体産業の復活に向けての政策を話し合う「半導体・デジタル産業戦略検討会議」。経済産業省が主導する形で、学者や半導体、IT産業の経営者らを集めて、2021年3月から2022年4月にかけて5回ほど開催された。
その座長を務めるのが、半導体製造装置メーカーで国内最大手の東京エレクトロン元会長の東哲郎氏だ。45年にわたって半導体産業を見てきた東氏は、今の日本の半導体産業が置かれた状況をどう見るのか。国策の必要性や目指すべき方向を聞いた。

日本の半導体は2周遅れ

──エルピーダメモリの経営破綻や国家プロジェクトの離合集散など、国策での半導体支援は失敗を繰り返してきた歴史があります。

あまり批判したくないが、過去のやり方はお金をばらまいて、本当に事業化したかまで見ていなかった。さらに、ある時期はアクセルをかけたり、ある時期は予算を絞ったりと、一貫性がなかった。「苦しいときに助けてくれなかった」と、国に対し不信感を持っている民間事業者がいるのも事実だ。

アメリカでは巨額の軍事予算がつけられ、そこで最先端の半導体や技術が開発されて民生品にも下りてくる。日本の場合、そうした基礎的な開発が弱い。あくまで民間主体でビジネスとして責任を持ってやる形にしつつ、国が税制面や財務面でサポートをする形がいいのではないか。

──自民党の「半導体戦略推進議員連盟」は5月下旬に、半導体の製造基盤強化のために「10年で官民あわせて10兆円規模の投資」を提言しています。やはりこれぐらいの規模が必要でしょうか。

日本の半導体産業は世界から2周ぐらい遅れている。これを取り戻すには2、3年で済む話ではなく、10年近くかかる。10年スパンで考えると、最低でも7兆円ぐらいは必要だろう。

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