安倍首相の農協改革を過小評価するな 「安倍VS農協」は「痛み分け」ではない
背景には、農協改革を推し進める安倍首相に対抗し、本来、自民党の支援が「お約束」の農協が中心となって、対抗馬の擁立に走ったことがあげられる。これで、「安倍政権」対「農協」の構図が出来上がったのだ。
自民党の一部県議や有力市長らも反旗を翻したという。当選した山口知事は、あえて安倍政権の農協改革に触れ、「押しつけでなく、地方でしっかり話し合ったうえで進めるべだ」とくぎを刺した。
知事選敗北でも、改革の流れ変わらず
この結果に、自民党内には大きな波紋が広がった。自民党議員は、大まかに言って、都市部と農村部の選挙区で大きく二つに分かれるが、農村部出身の議員は、改めて農協票が必要ということを知らされた。自民党内での議論まっただ中に出た佐賀知事選の結果は、改革の結末に大きく影響したと見られる。
全中は、一般社団法人への転換になったものの、県中央会は名称も含め従来のまま存続するという方向で、農協の権限が中央から、府県単位に移行されるだけではないかという見方がある。農協も、解体論まで出ていたが、農業者にとっては必要不可欠ということで、そのまま残ることになった。
だが、中央集権が府県に分散されただけでも、組織としては痛手だ。会計監査の権限が奪われ、運営資金が思うように集まらないだろう。TPP交渉が今後ヤマ場にさしかかったときに、影響力を失った中央会がどこまでかかわれるか。権力と資金が縛られた状態では身動きが取れるはずもなく、残された役割は、とりわけ難しいコメの生産調整という仕事を政府から押し付けられるだけ、という見方さえある。
もし、全中に代わって県全中が幅を利かせようにも、組織を収めるだけの能力があるかどうか。そもそも、農業者が農協を介さず直接販売をされたらお手あげだ。そうならないためには、「農業者に役に立つ農協」を組織していかなくてはいけない。
自民党で農協改革に取り組む行政改革推進本部所属の議員が、「健康保険や年金、農機具や肥料、そして品種改良などの情報提供などとで、農業者に必要とされる組織への移行が迫られる」というように、農協という本来の協同組合のあるべき姿に取り組むべきだ。農業者にしても、農業を営むうえで、すべての情報を個人で収集することは難しいという関係でもある。
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