「82歳の講師」が教壇に立つ深刻すぎる教員不足 教員の自己犠牲で成り立つ公立学校は崩壊寸前

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名古屋大学の内田良教授らが2021年11月に公立の小中学校教員に実施したアンケート調査によると、所定の労働時間を超えて学校や自宅で行う「総時間外勤務」の合計値が、過労死ラインとされる月80時間を超えている教員は、小学校で59.8%、中学校では74.4%にも上っていた。

さらに同調査では、総時間外勤務が長い教員ほど、準備不足のまま授業に臨んでしまっている傾向も明らかになった。調査した内田氏は「長時間労働と授業の準備不足はリンクしている」と警鐘を鳴らす。危機に追い込まれる公立学校のシワ寄せは不準備授業を受ける子どもたちにも行く。

シワ寄せは授業の質低下だけではない。複数の教員によると、担任不在のクラスの授業をほかのクラスの担任が補おうとすることで「自習時間が増えている」のだという。昨年小学校2年生の学年主任をしていた男性教員は、「2クラス合計で、7人もの教員が代わる代わる担任をした」と話す。

1年間に担任が何度も代われば、教員と児童・生徒の信頼関係構築は当然、難しくなる。

教員志願者が減り続ける

教員不足を解消するためには、欠員を補充する非正規の臨時的任用教員(臨任)を増やすことが必須だが、そう簡単ではない。臨任は教員採用試験に不合格だった人が講師名簿に登録し、休職者が出た場合などに任用される、いわばベンチの控え選手だ。

だが、教員志願者の数は年々減り、採用試験の競争倍率は3倍台にまで低下。その結果、臨任の層が薄くなっている。

教員志願者数の減少は深刻だ。教員養成大学の雄として知られる東京学芸大学に衝撃が走ったのは2020年3月のこと。教員養成系学部の卒業生のうち、教員になった割合が55%にとどまったのだ。

大学は教職の魅力を学生に伝える授業改革などもろもろの改革を講じ、22年の教員就職率は6割にまで戻ったが、7割前後を維持していた過去に比べたらまだ低い。

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