「奨学金490万円」29歳男性が感じた海外との格差 ドイツ人留学生の「俺の国は学費タダ」に衝撃

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吉田慎一さん(29歳・仮名)は490万円を借りて、都内の私立大学に通った男性。途中、台湾の大学に1年間留学し、英語を勉強。ヨーロッパから来た留学生たちと交流する中で、彼らの学費の安さに衝撃を受けたと言います(写真:Imazee/GettyImages)
これまでの奨学金に関する報道は、極端に悲劇的な事例が取り上げられがちだった。
たしかに返済を苦にして破産に至る人もいるが、お金という意味で言えば、「授業料の値上がり」「親側におしよせる、可処分所得の減少」「上がらない給料」など、ほかにもさまざまな要素が絡まっており、制度の是非を単体で論ずるのはなかなか難しい。また、「借りない」ことがつねに最適解とは言えず、奨学金によって人生を好転させた人も少なからず存在している。
そこで、本連載では「奨学金を借りたことで、価値観や生き方に起きた変化」という観点で、幅広い当事者に取材。さまざまなライフストーリーを通じ、高校生たちが今後の人生の参考にできるような、リアルな事例を積み重ねていく。

「台湾人の友達の家で寝転がってテレビを見ながら、ポテトチップスをコーラで流し込んでいたんですよ。楽しくて楽しくて、『こういう暮らしをずっとしたいなあ』と冗談混じりにつぶやいたところ、ドイツからの留学生が『だったら、俺の国に来ればいいじゃん。ドイツの大学は学費がほとんどタダだから』と言ってきて、びっくりして」

今回、話を聞いたのは現在、神奈川のコンサルティング会社に勤務する吉田慎一さん(29歳・仮名)。奨学金を借りながら、都内の大学に在学中、台湾に1年間留学した経験を持つ。同氏は続ける。

「でも考えてみると、海外の大学教育というのはそんな金銭感覚なんですよね。私立はさておき、国立や公立、州立なら、学費が日本より全然安い。それを知ってから、奨学金制度には感謝の気持ちは当然ありますが、それでも『コストのかからないものであるべき』と思うようになりました」

中流家庭出身も、奨学金は必須

吉田さんは、東京大学に進む生徒を毎年輩出するような、県内屈指の進学校出身。しかし、奨学金を借りることは、彼にとって大学進学の必須条件だったという。

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