国家公務員の「夏賞与最大減」に見る民間との差異 上場企業大幅アップの一方、最大減となった訳

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公務員ゆえの「NG」も重なる。2018年1月に厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成し、国家として企業に従業員の副業解禁を推奨している。多様な働き方の確保を目指す厚労省は、原則として全企業に副業を認めるよう促し、NGの場合には理由の開示を求めるといった強い姿勢で臨む。だが、公務員は地位の特殊性や公共性から副業は認められていない。

 岸田首相は5月、英ロンドンの金融街シティーで「Invest in Kishida!(岸田に投資を)」と呼びかけ、2000兆円にも上る個人金融資産を生かした「貯蓄から投資へ」の流れを加速させる考えを表明した。副業とは異なり、公務員の株式取引はもちろんOKだ。

ただ、1995年の事務次官会議申し合わせで「株式の取引に当たっては、その職務との関係から国民の疑惑や不信を招くことがないよう各省庁に必要な措置を講ずる」とされ、2000年4月施行の国家公務員倫理法は本省審議官級以上の職員に株取引などの報告書提出を義務づけている。

2009年、経済産業省の審議官が半導体大手の合併情報を入手し、妻名義の証券口座で株を購入し、利益を得ていたことが発覚。2013年には勤務時間中に株取引を繰り返したとして警察庁の男性職員が職務専念義務違反にあたるとして懲戒処分を受けている。インサイダー情報を知り得る立場の公務員は、後ろめたいことがなくても、投資に躊躇するケースが少なくない。

採用試験の申込者も減少が続く

就職情報会社「マイナビ」が2023年卒業予定の大学生3年生と大学院1年生を対象に実施した調査によると、公務員を就職先の選択肢として考えたことがある学生は22.7%に上っている。その理由は「社会的貢献度が高い」が43.9%と高い。ただ、「考えたがやめた」との回答は41.5%に達し、増加する傾向にあるという。

いまだ人気の職業であることに変わりはないものの、長時間労働を強いられるといったネガティブなイメージもつきまとう。2021年度の国家公務員採用試験の申込者(総合職)は、前年度に比べ14.5%減の1万4310人で5年連続の減少となった。現行の試験が導入された2012年度には2万5000人を超えていたが、最大の減り幅だ。2022年度は1万5330人と微増したものの、現行試験下で2番目に少ない。

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