売春にハマる、最貧困シングルマザーたち

出会い系で生きざるをえないのは、なぜか

離婚しなければいい。夫から養育費をもらえばいい。親や親族に頼ればいい。そもそも、貧困だからって体を売るのか。体を売るにしても風俗店の方が安全で は。出会い系はないだろう。いろいろな疑問が浮かぶが、本書を読み進めると、出会い系にアクセスする彼女たちにはほとんど選択肢がないことがわかる。

家庭内暴力を振るう夫からは養育費も慰謝料もとれず、下手すれば籍も抜けない。家族とは断絶、友人はいないか、ゴタゴタに巻きこまれているうちに疎遠になった。子どもがいじめられる懸念や世間体から生活保護は受給できない。大半が離婚前後にメンタルが不安定になり、精神科に通院している。昼間のパートだけでは生活費は足りない。正社員への道は険しい。容姿に恵まれなければ30歳を過ぎると風俗店の門戸は狭くなる。結果、出会い系に手を出す。

彼女たちの抱える圧倒的な寂しさ

本書に出てくるのは、そんな八方ふさがりの女性たちだ。読み始めたときは「極端な話をされてもね」と正直、困惑した。「どうにかならなかったのか」という思いは絶えずよぎった。

出会い系で売春したきっかけについて聞くと、取材対象者の約2割が「だって寂しかったから」と答えたという。

「寂しいってなんだよ」と突っ込んでしまった。著者も困惑を隠さない。

“30歳も超えようという大人の女が、しかも子をもつ母親が、「寂しいから売春した」といって、そこに同情の余地があるはずがない。はずがない、と思っていた僕が、実は浅はかだった。僕は知らなかったのだ。「やむを得ず」売春相手に会ってしまうほどの、圧倒的な寂しさがあることを。そんな想定外の寂しさを生み出す、離婚、シングルマザーという、特殊な環境と心理を”

彼女たちは家族や地域、社会制度すべてに無縁な存在だ。彼女たちの絶望的な孤独を、それらの縁が足りている人間からは哀れむことはできても、置かれた立場を簡単に想像などできるわけがでかてないのだ。読み進めるうちに、その孤独にぼんやりと触れることができる。

著者は生活保護を受ければいいと彼女たちに働きかけるが、一様に拒否される。理由はさまざまだ。田舎では生活保護受給者に対する差別はいまだに残る。子どもを守りたいがために、踏ん張っているのに、その子どもが学校で悲惨な目に遭うことは絶対に許容できない。以前、市役所で屈辱的な目にあった。貧困を抜け出す一発逆転には婚活しかない。そのためには生活保護を受けていたら支障が出る。いずれも、世間の目が弱者のセーフティーネットをまったく機能させていない点が共通している。

著者が指摘するように彼女たちには共感できない。意見が矛盾していることも少なくない。だが、笑うこともできなければ、責めることもできない。彼女たちは福祉に頼らず、必死に生きているのだから。パートと出会い系で、世間がののしる税金泥棒にならずに。だからこそ、彼女たちの絶望的な貧困は世間からは漏れ落ちてしまっているんだけれども。

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