食べログに勝訴でも飲食店が抱く「後味の悪さ」 訴訟資料が「黒塗り」だらけで勝因わからず

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今回の判決について、都内で数店舗の飲食店を経営するオーナーは「痛快だった」と語る。今まで評点に関して疑問点があっても、食べログの担当者は「こればかりはわからない」の一点張り。そんな彼らの姿勢に不信感を抱いていたこともあり、原告の飲食店に「(食べログを)訴えてくれてありがとう」と謝意を示す。

だが、喜んでいる飲食店ばかりではない。

その代表格が、原告であり、焼き肉チェーンを運営する「韓流村」代表のイム・ファビン氏だ。2年間にわたる法廷闘争の末、悲願の勝訴判決を得たにもかかわらず、イム氏は判決後、「結局、何も変わっていない」と怒りをあらわにした。というのも、食べログが実際に何を行ったのかが明らかになっていないためだ。

勝訴したにもかかわらず、怒りをあらわにするイム・ファビン氏。取材は2時間にも及んだ(撮影:今井康一)

食べログ側は、争点となったアルゴリズムの変更内容に関して、裁判の過程では開示していた。しかし「営業機密の漏洩や不正防止のため」として、訴訟当事者以外の閲覧を制限するよう申し立てたのだ。

これに対し東京地裁は、原告側の主張を認め一部開示を命じたものの、すぐさま食べログ側が不服を申し立て、アルゴリズム変更に関する部分は今も「黒塗り」のままだ。裁判所が発令した秘密保持命令により、閲覧制限がかかった内容について原告側が外部に話すことも許されない状況にある。

「黒塗り」対応が招く不信感

執拗に隠そうとする食べログの姿勢から、黒塗り部分に営業機密以上の何かを隠しているのではないかと見る関係者も少なくない。運営会社のカカクコムは取材に対し、「『判決は不当であり、控訴する』以外のコメントは控える」と述べるにとどまっている。

原告の代理人を務めた皆川克正弁護士は、「営業機密等の理由で閲覧制限をかけるというのはわかる」と理解を示す一方、「ある程度開示する姿勢を見せないと、飲食店や消費者に『やましいことがあるのではないか』と不信に思われても仕方ない」と指摘する。

「こうした態度を貫いていると、“食べログ離れ”につながりかねない」。皆川弁護士はそう警鐘を鳴らすが、事実、飲食店や消費者のグルメサイト離れは以前から始まっていた。

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