トヨタが「リアル車将棋」に本気で挑む理由 ニコ生との異色コラボ、羽生善治名人も参戦

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トヨタマーケティングジャパンの島田諒氏

ただ、トヨタほどの巨大組織だ。ゴーサインが出たといっても、実際に進めていくハードルは高い。トヨタマーケティングジャパンの担当者はトヨタ本体で販売会社をまとめる営業部や、メディアに情報を発信する広報部などに協力を打診。社内調整を進めるとともに、ドライバーの手配や会場探しなどに奔走。ドワンゴとは週1回のミーティングを繰り返し、担当者間でのメールは膨大な数が飛び交った。

ドライバーチームは早稲田大学自動車部の学生とトヨタの精鋭テストドライバーが5人ずつ。リアル車将棋の企画を、トヨタ側でとりまとめているトヨタマーケティングジャパンの島田諒氏は言う。

「もっといいクルマをつくるために」

「トヨタとしてはただクルマを使うだけではもったいなく、企画にかかわらせてもらうからには、もっといいクルマをつくるために人を鍛えたい。トヨタがまじめにクルマをつくっていることも知ってもらいたい。有名なレーシングドライバーなどではなく、テストドライバーを人選したワケはそこにある」。

豊田章男社長が最終的なゴーサインを出した(撮影:梅谷 秀司)

最終的に西武ドームに決まったものの、会場も「野球場だけでなく展示場やサッカー場など、広大なスペースにはほとんど当たった。日程的に空いてなかったり、床面を傷つける懸念や排気ガスの問題などがあったりで、かなりの数の施設に断られた」(島田氏)という。この企画を裏で支えるスタッフは外部協力業者も入れると約250人に上るという。

対戦カードを提案したのはドワンゴだ。ドワンゴ担当者は「当社は企画を決めてから社内で事後報告した。やれば面白いに決まっている話だったから」と笑う。日本一の自動車メーカーとそのクルマ、ネットの異端企業、最強の棋士――。異色のコラボで打ち出す一戦は世間の耳目を集めそうだ。ただ、これはあくまで話題づくりに過ぎず、これを一つのきっかけにして、本当の意味で若者のクルマ離れに対して本質的な取り組みを打ち出していけるかが、トヨタの課題であることには変わりがない。

武政 秀明
たけまさ ひであき / Hideaki Takemasa

1998年関西大学総合情報学部卒。国産大手自動車系ディーラーのセールスマン、新聞記者を経て、2005年東洋経済新報社に入社。2010年4月から東洋経済オンライン編集部。東洋経済オンライン副編集長を経て、2018年12月から東洋経済オンライン編集長。2020年5月、過去最高となる月間3億0457万PVを記録。2020年10月から2023年3月まで東洋経済オンライン編集部長。趣味はランニング。フルマラソンのベストタイムは2時間49分11秒(2012年勝田全国マラソン)。

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