子どもへの性加害、親が意外と知らない怖い実態 「優しいお兄さん」と思っていたら裏切られる事も

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ある男性は、自分も小6まで6年間、同じ団地の「お兄さん」に性加害を受けた経験があり、同じように男の子を襲った。斉藤氏は言う。

「もし男性が誰かに被害を打ち明けて適切なケアを受けていたら、次の被害者は生まれなかったかもしれない。被害と加害は地続きであり、加害者臨床の目的は再犯防止だけでなく、負の連鎖を断ち切ることにもあるのです」

再犯防止のカギは孤独の解消
ジェンダーバイアスも背景に

斉藤氏によると、性加害者にとって再犯の最大のトリガーは「孤独」だ。「社会から排除されて自尊感情が傷ついた時、最も手っ取り早い回復の方法が加害行為だからです」

しかし「社会から最も強いバッシングを受ける」(斉藤氏)のもまた、子どもへの性加害者。このため小児性愛者は、加害者臨床の中で最もドロップアウトする割合が高いという。

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ただ治療を通じて、同じ問題を抱える仲間に出会うことで、何年も再犯せずに過ごす受講者も増えている。斉藤氏は「適切な治療を受ければ、加害者は必ず変われる」とも強調する。

また斉藤氏は、男性は女性から敬われ、上に立つべきだという社会のジェンダーバイアスや、子どもを性的な対象と見なすことが許容されがちな文化の在りようも、加害につながっていると考える。日本は、多くの先進国が輸入や購入を禁じている「児童型ラブドール」を、合法で所有できる国でもある。

「加害男性にとって、子どもは決して自分の存在を脅かさない『かわいい』存在であり、彼らを支配し生殺与奪の権利を握ることで『飼育欲』を満たしています。社会全体が男尊女卑的な価値観から脱することは、新たな加害者を作らないという面でも、よい影響をもたらすと思います」

有馬 知子 フリージャーナリスト

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ありま ともこ / Tomoko Arima

共同通信社を経て2018年独立。取材テーマはひきこもり、児童虐待、性暴力被害や多様な働き方など。

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