子どもへの性加害、親が意外と知らない怖い実態 「優しいお兄さん」と思っていたら裏切られる事も

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残念なことだが、加害者の中には子どもに関わる職業に就いているケースもある。「仕事熱心で、子どもたちや保護者に慕われる人も多い」と、斉藤氏。過度に疑う必要はないが「あんないい人が、性犯罪などするはずはない」という油断は禁物と言えそうだ。

被害者が加害者に転じる

日本の刑法に定められた性交同意年齢は、13歳と諸外国に比べ極めて低いが、とにかく13歳未満の子どもとの性交渉は、同意の有無にかかわらず罪に問われる。しかし加害者は口々に「でも斉藤先生、人を好きになるのは自由でしょう」「好きになった子が、たまたま10歳だっただけです」などと「純愛」を主張するという。

「自分の行為は『純愛』だ、という認識のゆがみを正すのは非常に難しく、時間もかかる。このため治療ではまず、行動を変えることに焦点を当てます」と、斉藤氏は説明する。

加害者には、公園など子どもの集まる場所に行かない、子どもが近づいたら距離を取るなど具体的な「回避行動」を身につけてもらう。子どもと接触しない期間が長くなり「純愛幻想」が少し遠ざかったところで、考え方の歪みに取り組むほうが、認識も修正されやすいという。そのうえで最終段階として、加害に至った理由を自分で説明し、被害者への謝罪と贖罪に向き合ってもらう。

「小児性犯罪者の特徴は、自らの欲望に対する衝動を制御するのが難しいこと。言語化は衝動性とは真逆の行為であり、自分の言葉で加害について繰り返し語ることが、衝動的な行動を抑えるのです」

斉藤氏はまた、小児性犯罪者は深刻ないじめや親からの虐待などを経験し「自分の思いを言語化する力を、奪われてきた人が少なくない」と指摘する。痴漢や盗撮など他の性犯罪に比べても、小児性犯罪の場合はこうした「逆境体験」を持つ人が顕著に多いという。かつてモノ扱いされた人が、今後は自分の番だとばかりに弱い子どもたちをモノ扱いする、悪循環が起きているのだ。

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