学校で「いい先生」が正規教員になれない理不尽 現場の評価と一致しない採用試験の評価

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そもそも、昨今は中小企業を中心に人手不足が著しく、人材の確保という側面から、非正規社員の正規化を図る企業も少なくない。そうしたことから、民間企業の非正規率は2019年の38.3%をピークに2年連続で減少するなど、状況はわずかながら改善に向かっている(総務省「労働力調査」)。

しかし、公立学校には民間企業のような「無期転換ルール」がなく、長い人は10年以上にわたって非正規雇用のまま働き続けている。人手不足が著しい状況にもかかわらず、非正規教員の正規化を積極的に図ろうとする自治体は皆無に等しい。

「現場の評価」と「採用試験での評価」が一致しない

教員には民間企業のような正規化のルートがないことから、どんなに学校での評価が高くでも、正規教員になる唯一の道は教員採用試験を突破することだ。

実は武田さんのように、高い能力と実績を持っているにもかかわらず、採用試験に落ち続ける人は珍しくない。中には高い授業力があり、学校のキーマンとして活躍しているような人が、非正規教員というケースもある。

首都圏の公立小学校に勤める川島和希さん(仮名、第1回参照)も、そんな教師の一人だ。非正規教員として働き続けて10年近くの間、正規教員が敬遠するような難しいクラスの担任を幾度となく受け持ち、時に荒れた学級の立て直しを任されることもあった。学校教育や子どもたちに対する貢献は計り知れない。

こうした人たちが非正規のまま働き続けているのは、「職場での評価」と「教員採用試験での評価」が一致しないことによって起こる現象だ。

教員採用試験の実施形態は自治体によって異なるが、おおむね1次試験と2次試験の2段階で行われる。1次では主に筆記試験が課され、教育に関する学術的・制度的な知識が問われる。出題範囲は非常に広く、しっかりと対策をして本番に臨むことが必要となる。それを突破して2次に進めば、面接や模擬授業などが待っている。

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