もしもMBA学長がフェスをプロデュースしたら 「茨城からフェスの灯は消さない」決意と勝算

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まずは地球環境に配慮する「GREEN」。そして、ヒップホップからポップスまで多彩なジャンルのアーティストを招聘する音楽の「クロスオーバー」。そして音楽だけではなくアートや食を楽しめる空間にする「テーマパーク」も大きなコンセプトだ。このために、「肉フェス」や「餃子フェス」などを手がけてきた遠藤衆氏に4人目のプロデューサーとして参画してもらった。お子様連れや初めてフェスに参加する人にも楽しんでもらえる設計にするために「ファミリーエリア」や「貴賓席エリア」を設けるなど、いままでのフェスにない新たな取り組みを考えた。そして医師会の協力の下で万全を期す「安心・安全」。この5つのコンセプトで進めることにした。

そしてフェスの名称も公募を経て、100を越える候補の中から「LuckyFM Green Festival」(略称:LuckyFes)と決定した。名称と推進体制とコンセプトの確立。この2つが固まり、プロデューサー陣が確定したのは、3月に差し掛かろうという時だった。

アーティストのブッキング

刻一刻と時間が経過していく中、僕たちにはまだやらなければいけない一番の大仕事が残っていた。アーティストのブッキングだ。ただでさえ半年前ともなると、すでに予定が詰まっているアーティストも多い。さらに実績もないLuckyFesへの出演依頼なのだから、そう簡単な話ではない。

僕は当初から、適正な相場であれば、値段交渉することなしにギャランティを支払うことを決めていた。これまでにない新しいフェスを一緒に作り上げていく仲間となるアーティストに、相応の対価を支払うのは当然のことだ。それを渋って、規模やグレードを下げる考えは微塵もない。

だがアーティストはお金だけでフェスの参加を決めてくれるわけではない。自らのレピュテーションを維持する、あるいは高めるために、「誰が主催しているのか」「コンセプトは何か」「会場はどこか」「これまでの実績はどうだったか」「他に誰が出演するのか」など、価値があるフェスか否かを見極めたうえで参加を決めるのだ。

LINEに次々と送られてくる候補者の名前を即座にWikipediaで調べ、曲をSpotifyで聴き、「この人だ!」と思うアーティストやマネジャーに、DJ DRAGONと矢澤氏が交渉を続け、必要に応じて僕が説得に乗り出した。僕たちには実績はないけれど、練りに練ったコンセプトと熱意があるプロデューサー陣がいた。会場はロックの聖地、国営ひたち海浜公園だ。そのことを僕たちは、彼らに熱く語り続けた。最後の一押しはパッションだ。

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