東芝、火中の栗を拾う「取締役会議長」を待つ難題 「モノ言う株主」の力が増す取締役会をまとめられるか

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株主総会で取締役候補者が全員選任されると、東芝の取締役メンバーは合計13人(再任6人、新任7人)になる(写真:編集部撮影)

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「東芝、経済産業省、議長候補者、全員が納得する落としどころではないか」

6月28日の定時株主総会に向け、東芝が発表した取締役13人の選任案。焦点の1つが、取締役会の議論をリードするという重責を担う「取締役会議長」の候補だった。ある金融関係者は5月下旬に公表された候補者名を観て、冒頭のように合点した。

候補となったのは、フーリハン・ローキー会長の渡辺章博氏(63)だ。独立系M&A助言会社であるGCAの共同創業者で、日本たばこ産業(JT)の飲料事業のサントリーへの売却など多くの案件を手掛けてきた。

GCAは2021年9月、アメリカの投資銀行であるHoulihan Lokeyに買収された。その後、日本とアジア地域におけるGCAがフーリハン・ローキーに社名を変え、GCA社長だった渡辺氏は会長となった。マネジメント業務の負担が軽減したこともあり、同氏に白羽の矢が立ったというわけだ。

昨年末の段階で取締役就任の打診が来ていた

構造改革が待ったなしの東芝は混迷を極めている。半導体などのデバイス事業を分離する会社分割案は2022年3月の臨時株主総会で否決され、今は非上場化を含めた再建策を検討している。大株主として存在感を放つ「モノ言う株主」への対応力を問われる局面も続いている。

この状況を鑑みれば、東芝の取締役会議長はまさに「火中の栗」と言えるポジション。ステークホルダーからさまざまな意見が出る中で舵取りを誤れば、2021年の定時総会で再任が否決された永山治・元取締役会議長(中外製薬名誉会長)の二の舞になりかねない。そんな中、渡辺氏が候補に指名され、それを引き受けたのはなぜなのか。

「昨年末ごろにはすでに(渡辺氏に)打診が来ており、今年4月にはある程度詳細が決まっていた」

議長に渡辺氏を招聘する案は水面下で調整が長く行われていたと関係者は明かす。

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