ヤマト、メール便廃止で規制との闘いに決着 今年上場する日本郵政の攻勢が響く

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クロネコメール便はなくなり、DM便など3つのサービスを開始(撮影:梅谷秀司)

ヤマト運輸は今年3月末までに「クロネコメール便」を廃止することを発表した。メール便はヤマトホールディングス(HD)の売上高の9.2%(前2014年3月期)を占める。メール便の中に、はがき・手紙など信書が交ざるリスクを避けるため、廃止を決めた。

郵便法4条によれば、信書の送達を行う事業は、日本郵便(JP)以外が行うことはできず、依頼主もJP以外には委託できない。違反した場合、同76条により、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処される。刑事罰は事業者のみならず、個人の利用者にも下されるのだ。

ヤマトでは、顧客が誤ってメール便で信書を送り、警察の取り調べや書類送検の対象とされたケースが、前期までの5年間で8件あった。今年4月にヤマトHD社長に就くヤマト運輸の山内雅喜社長は、「信書と、それ以外の冊子や書類との区別が非常にあいまいで、総務省もすぐ回答できない。信書の定義について認知度も低い」と断じる。

すでに取り扱いはピーク過ぎた

同社は2011年9月から、顧客の署名を求めるなど荷受け基準を厳格化させ、総務省の情報通信審議会で外形基準の導入を主張。だが受け入れられず、「顧客を法令違反のリスクから守る」(山内社長)べく、この結論に達した。

もっとも、クロネコメール便の取扱数量は、2011年3月期がピークだ。翌期から荷受け厳格化で減少し、今2015年3月期も12月まで8.7%減。2014年秋に木川眞社長(4月に会長就任予定)は低迷の理由を、「今期に入ってからJPの価格攻勢が強い。しかるべき手を打つタイミングに来ている」とし、事業再編をほのめかしていた。

メール便の場合、個人宅のポストに直接投函でき、再配送の必要がないため、効率性は高い。だが人手不足が進む中、セールスドライバーと別に組織されたクロネコメイト4.7万人の人件費が再編の一因、とする見方もある。

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