日本のスポーツ教育で暴力の根絶が難しい理由 サッカー現役日本代表「指導者はもっと勉強を」

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現役の日本代表GKであるダニエル選手も「暴力で黙らせようとか抑え込もうとしても、基本的に難しいと思うんです」と語る。

シュミット・ダニエル選手(2022年5月20日、中央大学多摩キャンパス、筆者撮影)

暴力指導は「何一つ意味のないこと」

「反発を生むし、亀裂も生む。いいことなんてないでしょう。状況が悪くなるだけですよね。何一つ意味のないことをやっているとしか感じられません。

秀岳館高校の指導者は、指導内容について、自分の中でハッキリとした答えが出せず、ロジカルに説明できないから、暴力に結び付いたのかもしれません。

選手から『ちゃんと教えてほしい』という要望があっても、それに応えられないですよね。もっともっと、指導者も勉強しなければいけません」(ダニエル選手)

ダニエル選手がプレーするベルギーをはじめ、ドイツ、スペイン、フランス、イタリア、オランダといったヨーロッパの強豪国やブラジル、アルゼンチン、ウルグアイなどワールドカップで優勝経験のある南米の国々の選手は、数あるクラブの中から、自分に合うチームを見つけ、トライアウトを受けてその一員となる。自分に合うチームを選択するのだ。

だが、日本の高校生プレーヤーはJリーグの下部組織やクラブチームのユースに合格した一握りの選手を除き、多くは学校の部活に属する。いったん入学してしまえば、監督やチーム事情に合わないとわかっても、転校することは基本的にかなわない。

「わが校のユニフォームを着て公式戦に出場したいなら、言うことを聞け」という封建的な指導がはびこるのは、そんな因子もあろう。

また、問題を起こした監督も、ほとぼりが冷めれば現場に復帰できてしまう。先に挙げた立正大淞南高校の監督もしかりだ。

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