オンナの胆力「ルルドマッサージクッション」《それゆけ!カナモリさん》

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 そしてまた、インプリメンテーション(実行)のフェーズがいかに大切か、思い知らされる事例でもある。マーケティングや商品開発の職場は“花形”と思われ、学生から人気の高い職種の一つではあるが、実はひたすら社内調整に追われることも多い。

 いくら頭の中で素晴らしい戦略が描けても、素晴らしい商品を思いついても、それを社内政治の中で実行まで移すことがいかに難しいか。R&Dを説得し、営業に納得してもらい、流通を口説き落とす…。その過程の中で、エッジが削られ、小さくまとまった商品になってしまうことも少なくない。もちろんエビデンスも用意はするが、そんなもの解釈次第でいかようにでも反論されてしまう。

 リーマンショック以降MBA教育が見直される中で、「実行する能力」が問われなおされている。頭の中で描いたものを、実行のフェーズまで移すある種の政治力がないと、結局変革やイノベーションは起こせないからだ。

 今回のデザイン開発コンセプトが「かわいいけれど甘すぎない」マッサージ機であったというが、社内の男性陣の意見を振り切った結果、商品は大ヒットした。発売から1年以上が経過した今でも売れ行きに衰えがないというから、担当者の慧眼、実行力には脱帽だ。

 「仕事の合間に独自に開発を始めた」という、あらゆる反発にあってもめげない、信念を貫き通すオンナの胆力や執着心。草食化した男子も、学びたいものである。

《プロフィール》
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
◆この記事は、「GLOBIS.JP」に2011年2月18日に掲載された記事を、東洋経済オンラインの読者向けに再構成したものです。
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