書かれていない筆者の真意を汲み取る国語訓練法 体験を結び付けて、文章を頭の中で映像化する

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そこで、読み聞かせの前にこう教えてあげるのです。「この世には、目には見えないけれど、私たちの悩みを聞いて助けてくださる仏様がいるのよ。そのお一人が、観音様。きょうはね、お寺にお参りをしたら、その観音様のお声が聞こえたという男の話を読んでみましょう」

こんなふうに、摩訶不思議な物語世界にお子さんを誘っていただくと、子どもたちは目を輝かせ、周囲の物音も聞こえないほど物語世界に没入してくれますよ。

対話と想像力で書かれていない本質に気づかせる

ここまでは、単語の意味さえ理解させれば、なんとかなりそうですよね。次に大事なのが、文章に書かれていない、「観音様がなぜ、まず男に「わらしべ」をつかませたのか?」ということへの洞察です

つまり物語の冒頭で、「主人公の男が取るに足らないもの、人から見ればゴミ同然のつまらないものを手にした」ということを理解させなくては、このお話の真意が読みとれないのです。

そこで、読み聞かせの途中、少し読むのを中断し、こう問いかけます。

「あらら、せっかくお告げを聞いたのに、男はころんで、つまらない物をつかんだわね。みんななら、どうする?」

「ぼくはもう一回お寺にもどってやり直す!」

「私なら捨てる」

など、子どもに自分ならどうするかを考えさせます。そうすることで、主人公の男が自分とは違った考えの持ち主であったこと、長者になるまでにいったいどんな行動をとったのかに、強い興味を持たせるわけです。

そうして読み聞かせの後、私は子どもたちとこんな対話をするんです。

「男は自分の持っているものを、欲しがる人、困っている人に次々与えていったわね。みんなは、こんなことできる?」

「あげられない。だってこの男みたいにお礼をもらえるかどうかもわからないし」

「そうだよね、こんな優しい人はなかなかいないね。じゃあほかに、この男の人が普通の人とは違うところ、見つけられた人いるかな?」

「はーい。仏様をすごく信じているところ!だって、信じていなかったら、わらしべなんか持って歩かないよ」

「なるほど〜。ということは、このお話、信心深くて心の優しい人が幸せになれる、と教えてくれるお話だったんだね」

こうして対話することで、子どもたちは「神仏を敬い、どんな些細なことでも自分にできる事を人のためにやっていれば、感謝された分だけ幸せになれる」という、わらしべ長者の教訓をしっかり受け止めてくれるのです。

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