誰のためのMBOか 問われる“上場”の意味

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 既存の株主側は「高く売りたい」が、多くが創業家でもある経営側は「安く買い集めたい」。たとえば、出版社の幻冬舎の場合、公開買い付け価格は当初22万円で、前日終値に51%のプレミアム(上乗せ幅)をつけた。それでも、解散価値である1株純資産(BPS)の37万6060円に比べ、かなり安い。

TOB開始後、市場に突如現れ、対抗して株を買い進めたのは、正体不明のイザベル・リミテッド。幻冬舎経営陣は24万8300円まで価格を引き上げたが、最終的に3分の1超を取得された。ただ信用取引で買ったイザベルは現物株を引き取れず、貸し手の立花証券が第2位の名義で浮上。証券会社と一体化すれば、信用取引で議決権を行使できるという、大きな問題を含む(※立花証券は臨時株主総会を欠席)。

一般的にMBOのプレミアムは現在平均30%とされる。しかしそれも経済状況で違い、一時は50%超の時期があった。決め方にしても、ディスカウントキャッシュフロー(DCF)法や類似会社比較法など複数あり、統一されていない。対象となる株価の期間も、発表前の3カ月平均か半年平均か、案件でまちまちだ。恣意的な運用が入り込む可能性は残る。

非上場後の落とし穴

MBOで非上場化されればそれでよし、というほど単純でもない。多額の資金を要するMBOは、創業者といえど社長個人で賄えず、投資ファンドと共同で実施する例が多い。落とし穴もそこにある。

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