ジョニー・デップ、「魔の女」に人生破壊されるまで 勝訴でジャック・スパロウ役を取り戻せるか

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デップが最後にジャック・スパロウを演じたのは、ハードと結婚してまもない2015年のことだ。オーストラリアでのロケ中、ハードがウォッカのボトルを投げつけてきたせいで、デップは指先を切断する大怪我をしている。『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』(2017)に出てくるデップの手は、大きな包帯を隠すべくCG処理がなされたものだ。

そもそもデップが『パイレーツ』に出ようと思ったのには、1999年に長女リリー=ローズが生まれたことが大きい。娘と一緒にアニメーションばかり見ていた彼は、『パイレーツ』の脚本を読んで、ジャック・スパロウを漫画のようなキャラクターにできるのではないかと考えたのだ。

脚本にあるジャック・スパロウは典型的なヒーローだったが、デップは漫画的なものや彼の敬愛するキース・リチャーズの要素を入れ、まるで違うものにしてみせた。デップにとって、ジャック・スパロウは、特別な思い入れのあるキャラクター。記者会見でも毎回、「ジャック・スパロウを一生演じていきたい」と語っていた。

裁判で失われた名誉と役を取り戻せるか

なのに今、彼はそれを奪われてしまったのだ。デップのマネージャーは、シリーズ6作目のデップの出演料は2250万ドルと決まっていたと証言している。つまり、スタジオは、デップでシリーズを続けるつもりだったのだ。それが一転して彼を出さないとなったのは、ハードが自分に着せた汚名のせいだとデップは確信する。

やはりDV疑惑が原因で失った『ファンタスティック・ビースト』のゲラート・グリンデルバルド役は、すでにマッツ・ミケルセンにわたってしまった。映画はすでに公開もされている。

だが、『パイレーツ』シリーズ6作目の企画は準備段階で、キャスティングも発表されていない。デップがこの裁判で真実を証明し、人々と業界を信じさせることができたら、果たしてどうなるのだろう。裁判は今月27日まで続く。これから出てくる証言や証拠は、デップのジャック・スパロウを連れ戻すことになるだろうか。

猿渡 由紀 L.A.在住映画ジャーナリスト

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さるわたり ゆき / Yuki Saruwatari

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒業。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場リポート記事、ハリウッド事情のコラムを、『シュプール』『ハーパース バザー日本版』『バイラ』『週刊SPA!』『Movie ぴあ』『キネマ旬報』のほか、雑誌や新聞、Yahoo、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。

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