原因不明の「急性小児肝炎」専門家が警戒する理由 まだ不明点が多いが、重度な肝炎の兆候とは

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CDCは4月21日、アラマバ州で原因不明の急性小児肝炎が増えていることを受けて、警告を発した(写真:CDCのホームページより)

アメリカ・アラバマ州で子どもの重度の肝炎が相次いでいることを受け、4月21日、疾病予防管理センター(CDC)は全国に警戒を呼びかけ、医師や保健当局に対し、同様の症例の発生に注意し、報告するよう要請した。

当局は、アデノウイルスが原因の可能性があるとして調査を進めている。アデノウイルスとは、風邪に似た症状や胃腸炎、結膜炎などの病気の原因としてよく見られるウイルス群である。

肝炎は肝臓の炎症であり、原因はウイルス、化学物質への曝露、一部の薬品、その他の身体疾患などさまざまだ。

昨年の10月から5カ月で9件確認

アラバマ州公衆衛生局は、10歳未満の健康な子どもが原因不明の肝炎にかかった例を昨年10月から今年2月の間に9件確認している。死亡した子どもはいないが、何人かが肝不全を発症し、2人が肝移植を必要とする状態になった。

9人の子ども全員がアデノウイルス感染症の検査で陽性が判明。数人から、下痢、嘔吐、呼吸器症状を引き起こすとされるアデノウイルス41型が検出された。アデノウイルスは肝炎を引き起こすことが知られているが、一般的に罹患するのは免疫不全の子どもである。

ジョンズ・ホプキンス・チルドレンズ・センターの小児感染症専門家アーロン・ミルストーン博士は「健康な子どもが、アデノウイルスが原因で肝不全にかかることはまずない」という。

CDCは21日に出した声明の中で、アラバマ州で起きた感染の原因は、一般的に肝炎を起こすとされるA型、B型、C型肝炎ウイルスではないとした。

「現時点では、アデノウイルスが報告された症例の原因だと考えているが、引き続き調査を行っている。ほかの原因の可能性を除外したり、別の要因を検討したりしている」とCDCは説明した。

最近、イギリスでも同様の症例が報告されている。

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