「反イスラム」が高まれば法規制の議論も 鹿島茂氏が読み解く仏紙襲撃事件(後編)
自由なジャーナリズムを許してきたフランスでは誹謗中傷も多く、それに対する唯一の解決策は決闘だった。法律で決闘を禁じられてからも第一次世界対戦のころまでやっていました。申し込まれた方は、剣かピストルか、武器を選ぶことができる。だから、ジャーナリストになったら射撃かフェンシングを習う。
その伝統で、ジャーナリストって、書きたいこと書いてもいいけれど、命を失っても仕方がないよという不文律があるんです。そう覚悟をして書くものだという。だから、シャルリエブドで殺された人たちも殉職者ということになる。フランスの普遍主義原理とイスラムの普遍主義原理の正面衝突です。
共和国原理を守るためのラ・マルセイエーズ
――カトリックの権威と戦ったころは、「権力への挑戦」だったというのも理解できますが、いま、フランスでは少数派のイスラム教徒の気持ちを傷つけるのは、どうかとも思います。
フランスでそう言うと、テロリズムを容認している、ゲソー法違反、と言われますよ。
――13日に国会議員達がラ・マルセイエーズを歌って、バルス首相が「戦争」を宣言した。これは穏やかじゃないですよね。
「一にして不可分」の共和国原理への挑戦と捉えたからでしょう。「反イスラム」ではなくて、共和国原理を害するテロとの闘いだ、というための、ラ・マルセイエーズですよ。「自由・平等・友愛」は実はかなり戦闘的なものなんです。
――そこは、外国人にはわかりにくいですね。誤解されるのではないでしょうか。
誤解されるでしょうね。日本人には理解しにくい。フランス人は逆に、外国人に理解されないということがわからないんじゃないのかな。
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