ユニクロ「値上げ宣言」に踏み切れない複雑胸中 柳井氏の慎重発言に透ける国内の特殊事情

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ユニクロ商品の値上げについて「安易にはできない」と慎重姿勢を見せた柳井氏。原材料高騰に直面する中、値上げを躊躇させている要因とは。

2022年秋冬シーズンからの本格的な値上げを検討するユニクロ消費者の反応や競合の動きなどを見ながらの難しい舵取りが迫られる(撮影:今井康一)

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「今の日本の経済情勢から考えると安易な値上げはできない。やはり(消費者は)価格にすごく敏感だ」

4月14日に開かれた、ファーストリテイリングの2022年8月期中間決算説明会。柳井正会長兼社長は、国内のユニクロ商品の値上げについて慎重な姿勢を崩さなかった。

2021年から続く木綿・化学繊維などといった幅広い素材の価格上昇や物流費高騰が、ユニクロを筆頭とするアパレル各社を襲っている。ウクライナ情勢の悪化を受け、原材料価格は足元で一段と上昇基調にある。「原材料が2倍とか、50%アップとか、ひどいものは3倍ぐらいになった」(柳井氏)。

とはいえ数カ月~1年前から原材料や素材を準備するユニクロにとって、この数カ月での急激なコスト上昇がすぐに店頭商品の大規模な値上げにつながるわけではない。また、ファストリは約3年間の為替予約を実施しているため、3月以降に加速した円安が商品の調達コストに与える影響も当面は限定的だ。

「値上げで客離れ」にトラウマ

そのため2022年春夏シーズンの一部商品で実施した値上げの対象商品数も、店頭に並ぶ約500品番のうちの「ごく一部」(ファーストリテイリング広報)に過ぎない。

となるとコスト上昇を吸収するためにも、値上げが本格化してくるのは防寒着などの高単価品も多い秋冬商品からと見るのが自然だろう。柳井氏自身、「(足元の原材料価格の急騰で)今のプライスで売るというのは不可能だ」と認める。それでも冒頭のように、消費者の反応を探るような慎重な物言いをするのはなぜなのか。

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